【保存版】フロートガラスとは?

フロートガラス(float glass)は、建築業界で最も広く使用されているガラスの一種です。
その透明度と均一な厚み、強度、加工のしやすさから、多くの建築プロジェクトで採用されています。

本記事では、フロートガラスの製造方法から特性、用途、そして建築における具体的な活用例までを詳しく解説します。

建築業界のプロフェッショナルだけでなく、ガラスに興味を持つ全ての方にとって役立つ情報を提供します。

フロートガラスの製造方法

フロート法

フロートガラスは、その名の通り「フロート法」という製造方法で作られます。

ガラスの原料はスズに比べて比重が軽いため、溶解したスズの中に流し入れると、液体上部に浮かび上がります。
フロート(float)とは、日本語で「浮かぶ」という意味であり、これがフロートガラスという名の所以です。

フロートガラスの製法では、ガラスがスズの上に浮いた状態になり、自身の重みにより、キレイな平面が出来上がります。
このフロート製法の手軽さにより、板ガラスが広く普及しました。

この方法は1950年代にイギリスのピルキントン社によって開発され、以降、ガラス製造の標準となりました。

原材料

フロートガラスの主な原材料は、「珪砂」「ソーダ灰」「石灰」などです。
これらの材料を高温で溶かし、錫の浴槽に流し込むことでガラスが形成されます。

出典:visiontir.com

フロートガラスの特性

高い透明度

フロートガラスは非常に高い透明度を持ち、建物の内外を自然光で明るく照らすことができます。
この特性により、様々な建築物で使用され、明るく開放的な空間を作り出しています。

均一な厚みと強度

フロートガラスは製造工程において均一な厚みを持つため、強度が均一であり、加工しやすい特性があります。
これにより、大きなガラスパネルの製造や複雑な形状の加工が可能となります。

フロートガラスは割れやすく、強度が弱いというイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。

しかし、フロートガラスは、圧縮に対して非常に強い素材です。
これは、ガラス表面が圧縮応力、内部が引張応力という状態になっているためです。

一方、フロートガラスは引張に対して非常に弱いという特徴があります。
引張とは、ガラスを引っ張る力のことで、ガラスに引張力がかかると、表面に小さな傷や欠けが発生し、そこから破損が始まります。

ガラスは、アモルファスと呼ばれる非晶質構造の素材です。
アモルファス構造は、規則的な結晶構造を持たないため、引張力に対して抵抗力が弱くなります。

優れた加工性

フロートガラスは切断、穴あけ、曲げ加工など多様な加工が可能です。

切断・小口処理 加工

フロートガラスは、特定の寸法に切断することが可能です。
加工は直線だけではなく、アール(曲線)での加工もできます。
また、ガラスの小口(エッジ)を適切に処理することで、安全性を確保することができます。

穴あけ加工

フロートガラスに穴をあける加工も可能です。
これは、ガラスを取り付けるための金物などを必要とする場合に使用されます。
専用工具を使用することで、ガラスにダメージを与えずに穴をあけることができます。

コーティング・フィルム加工

コーティングやフィルムを施すことで、遮熱、遮光、防犯などの機能を持たせることもできます。

フロートガラスの用途

建築用途

フロートガラスは建築用途で広く使用されています。
具体的には、窓ガラス、ドアガラス、ファサードガラス、内装ガラスなど、多岐にわたります。
高層ビルのカーテンウォールやショーウィンドウなど、広い面積を占めるガラスパネルにも使用されています。

商業施設

商業施設では、フロートガラスがショーケースやディスプレイに使用されることが多いです。
その高い透明度と美しい仕上がりは、商品を保護し、魅力的に見せる効果があります。

住宅用途

住宅においても、フロートガラスは窓ガラスやテーブルトップ、バルコニーの手すりなど、多くの場所で使用されています。特に、エネルギー効率の高い住宅を目指す場合には、断熱性能の高い複層ガラスやLow-Eガラスとして使用されることが一般的です。

フロートガラスの安全対策

飛散防止フィルム

フロートガラスに飛散防止フィルムを貼ることで、万が一の破損時にもガラス片の飛散を防ぐことができます。
特に、公共・商業施設など、多くの人が利用する場所では、この対策が重要です。

強化ガラスと合わせガラス

フロートガラスを強化ガラスや合わせガラスに加工することで、耐衝撃性や防犯性能を向上させることができます。

強化ガラスは、熱処理により通常のガラスの数倍の強度を持つように加工されており、合わせガラスは、複数のガラス層の間に中間膜を挟むことで、破損時にもガラス片が飛散しにくい特性を持ちます。

フロートガラスの取り扱いとメンテナンス

取り扱いの注意点

取り扱いには十分な注意が必要です。
特に、運搬時には衝撃を与えないようにし、設置時には適切な支持具を使用することが重要です。
また、ガラスのエッジ部分は特に脆いため、傷をつけないように注意しましょう。

メンテナンス方法

フロートガラスのメンテナンスは、定期的な清掃が基本です。
ガラス表面の汚れは、中性洗剤を使用して柔らかい布で拭き取ると良いでしょう。

強酸性や強アルカリ性の洗剤は、ガラス表面を傷める可能性があるため避けるべきです。

フロートガラスの環境への影響

エネルギー効率の向上

フロートガラスは、様々な機能を持つ製品を使用することで、エネルギー効率を高めることができます。
これにより、冷暖房の使用量を減らし、CO2排出量を削減することが可能です。
特に、複層ガラスやLow-Eガラスは、断熱性能が高く、エネルギー効率の向上に寄与します。

フロートガラスのリサイクル

近年注目されているリサイクルにおいては、現状、他の素材と比べていくつかの課題が存在しています。

ですが、使用済みのガラスを効率的に回収し、リサイクルするシステムの整備が進められており、課題は徐々に克服されつつあります。

フロートガラスの未来

スマートガラス

フロートガラスの未来として注目されているのが、スマートガラスです。

これは、ガラスの透明度を調整できる技術を持ち、プライバシーの保護や日射調整が可能です。
スマートガラスは、住宅やオフィスビル、商業施設など、さまざまな場所での活用が期待されています。

自己修復ガラス

基本的に、ガラスが割れてしまった場合、ガラス自身が自然に修復するということはなく、溶融など何かしらの手を加えない限り、再利用はできないものと思いますが…

なんと、東京大学の研究グループが、2017年末に世界初の「自己修復ガラス」を発表しています。

現状では、有機ガラスは建築用途において限定的な使用にとどまっていますが、いくつかの課題が克服されれば、将来的に建築材料として広く使用される可能性もあると考えられます。

自己修復ガラスは未来の建築や、環境、そして技術の発展において重要な役割を果たすことが期待されています。

まとめ

フロートガラスは、その透明度、均一な厚み、強度、加工のしやすさから、建築業界で広く使用されている重要な素材です。製造方法から特性、用途、環境への影響まで、幅広く理解することで、より効果的な活用が可能となります。

今後も新しい技術の開発により、フロートガラスの可能性はますます広がっていくことでしょう。

本記事が、ガラスに興味を持つ皆様にとって有益な情報源となれば幸いです。

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