フロートガラス(透明ガラス):現代建築を支える透明な革命

現代建築に欠かせない存在となったフロートガラス。

その誕生は、20世紀初頭に起こったガラス製造技術における革新と、建築家たちの創意工夫によって実現されました。

本記事では、フロートガラス誕生の歴史、製造方法、特徴、種類、用途、そして未来展望まで解説していきます。

フロートガラス誕生の背景

従来の板ガラス製造方法は、吹きガラス法やシリンダー法と呼ばれるものでした。
これらの方法で作られたガラスは、厚さが不均一で表面に波状の歪みがあり、高層建築や精密機器の用途には適していませんでした。

20世紀初頭、イギリスのピルキントン社は、これらの課題を克服するために、新たなガラス製造方法である「フロートガラス法」を開発しました。

出展:https://www.pilkington.com/

ピルキントン社は、イギリスに本社を置く多国籍企業であり、世界中に生産拠点と販売拠点を有しています。

日本においては、1973年に旭硝子と合弁会社である旭ピルキントン株式会社を設立し、建築用ガラスや自動車用ガラスなどを製造・販売しています。

フロートガラス製造方法

フロートガラス法は、溶かした金属のスズの上に、溶かしたガラスの原料を流し込んで作られます。

ガラスの原料はスズに比べて比重が軽いため、溶解したスズの中に流し入れると、液体上部に浮かび上がります。
フロート(float)とは、日本語で「浮かぶ」という意味であり、これがフロートガラスという名の所以です。

フロートガラスの製法では、ガラスがスズの上に浮いた状態になり、自身の重みにより、キレイな平面が出来上がります。
このフロート製法の手軽さにより、板ガラスが広く普及しました。

なお、前述に記載した通り、フロートガラスの製法が確立する前から板ガラス自体は存在していました。
しかし、フロート製法誕生以前は、歪みをなくすために磨き加工をする必要があったりと、手間暇がかかっていました。

このように、板ガラスの製作はとても手間のかかるものでした。

一方、フロート製法では、最も手間のかかる研磨の作業が無くなります。
当時の人々からすると、いかにフロートガラスが画期的なものであったのか想像に難くないでしょう。

フロートガラスの特徴

フロートガラス法によって製造されたガラスは、従来の板ガラスと比べて以下の特徴があります。

高品質
表面が平滑で歪みが少なく、透明度が高い

高強度
従来の板ガラスよりも強度が高く、安全

大判化
大判のガラスを製造することが可能

低コスト
大量生産が可能になり、コストが低減

これらの特徴により、現代においても、フロートガラスは建築や自動車、精密機器など、幅広い分野で利用されています。

フロートガラスの用途

フロートガラスは、以下のような様々な用途で使用されています。

  • 建築: 窓、ドア、ミラー、間仕切り
  • 自動車: ドアガラス、サンルーフ
  • 精密機器: 液晶ディスプレイ、カメラレンズ、光学機器
  • 家具: テーブル、棚、ミラー
  • その他: 水槽、温室、装飾品

建築におけるフロートガラスの様々な加工

強化ガラス

自動ドアやパーテーションなどに欠かせない強化ガラスは、フロートガラスを加工して作られます。

フロートガラスに熱処理を行い、急冷することで、通常のフロートガラスと比較して約3~5倍の強度を持ちます。
強化ガラスは割れた場合に破片が小さくなるので、割れても安全なガラスとなっています。

複層ガラス

住宅に欠かせない「複層ガラス」は2枚のフロートガラスの間に空間(中間層)をもたせることで断熱性能を期待できるガラスです。

中間層に熱伝導率の低い「アルゴンガス」を封入したものや、中間層を真空状態にした「真空ガラス」など高い断熱効果が期待できる、住宅向けのガラスです。

合わせガラス

2枚のフロートガラスの間に合成樹脂の中間膜を挟み、熱と圧力で圧着したガラスです。

中間膜の厚みにより、「防災安全合わせガラス」と呼ばれ、安全性の高いガラスとして、教育施設や公共施設で採用されることが多いです。

ガラスの片面に銀、銅の膜を施す加工をし、特殊膜で覆うことで鏡が作られます。

ガラスの透明度や歪みが鏡の映りに反映されるため、フロート製法による両面が平らで均一な厚みのガラスが不可欠です。

カラーガラス

化粧品売り場やオフィスのエントランスで壁材として使われることも多いカラーガラス。

フロートガラスの片面に様々な色の塗料を吹き付け加工することで、ガラス特有の高級感のある質感に仕上がります。

フロートガラスの未来展望

フロートガラスは、今後も建築や様々な分野で重要な役割を果たし続けると考えられます。

高機能化
省エネ性能、防音性能、防火性能などの向上

軽量化
軽量化による省資源化、施工性向上

スマートガラス
調光機能、透明・不透明切り替え機能などを搭載

3Dプリンティング
複雑な形状のガラス製造

これらの技術革新によって、フロートガラスは更なる進化を遂げ、私たちの生活をより豊かにしていくでしょう。

まとめ

フロートガラスは、現代建築を支える重要な素材です。
その誕生から現在までの歴史、製造方法、特徴、種類、用途、そして未来展望について解説してきました。

フロートガラスは、建築だけでなく、自動車、精密機器、家具など、幅広い分野で利用されています。
今後も、高機能化、軽量化、スマートガラス化など、更なる進化が期待されています。

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