ガラスは、建築、装飾、食器など、様々な用途で利用される素材です。
その歴史は古く、紀元前3000年頃にはすでに製造されていたことが分かっています。
その中でも、日常生活で目にすることの多い、板ガラスは、窓ガラスや鏡などに使われている、平らな形状のガラス製品です。
その製造方法は時代とともに進化し、より高品質で効率的な方法へと発展してきました。
本記事では、現代の主流となっているフロートガラス製法以前の板ガラス製造について解説します。
1. 古代における板ガラス製造
鋳造法
古代ローマ時代には、「鋳造法」と呼ばれる方法が開発されました。
この方法は、砂型に溶融ガラスを流し込み、固めて板ガラスを作る方法です。
この頃から、建物にガラスを取り入れる試みがあったと考えられていますが、鋳造法で作られた板ガラスは、現代のガラスように厚さも均等ではなく、透明度にもバラつきがあったとされています。
また、型を作るのが難しく、大判の板ガラスを作ることはできませんでした。
2. 中世における板ガラス製造
シリンダー法
中世ヨーロッパでは、「シリンダー法」と呼ばれる方法が開発されました。
この方法は、吹きガラス製法で筒状のガラスを作り、それを縦に切り開いて板ガラスを作る方法です。
シリンダー法で作られた板ガラスは、比較的大きな板ガラスを作ることができましたが、表面が平坦ではなく、気泡や歪みも多くありました。
クラウン法
17世紀後半、フランスで「クラウン法」と呼ばれる方法が開発されました。
この方法は、吹きガラス製法で球形のガラスを作り、それを回転させながら広げて板ガラスを作る方法です。
クラウン法で作られた板ガラスは、シリンダー法よりも平坦で、気泡や歪みも少なくなりましたが、生産効率が低く、高価な板ガラスでした。
3. 近世における板ガラス製造
フルコール法 / コルバーン法
20世紀初頭に誕生したフルコール法とコルバーン法は、板ガラス製造に大きな革新をもたらした技術です。
どちらも溶融ガラスを平板状に引き出して成形する製法で、従来の板ガラス製造方法よりも高品質な板ガラスを大量生産できる画期的な技術でした。
しかし、製造過程が複雑で、コストも高かったとされています。
「フルコール法」
フルコール法は、1913年にベルギーのエンジニア、エミール・フルコールによって発明されました。
垂直方向に溶融ガラスを平板状に引き出して成形する方法です。
「コルバーン法」
コルバーン法は、1916年にアメリカのエンジニア、イラ・コルバーンによって発明されました。
平行方向に溶融ガラスを平板状に引き出して成形する方法です。
4.フロートガラスの誕生
ピルキントンによる発明
20世紀中頃、イギリスのピルキントン社は、溶融ガラスを錫の溶融槽に浮かべることで、平坦で高品質な板ガラスを大量生産できる「フロートガラス製法」を発明しました。
フロートガラス製法は、板ガラス製造に革命をもたらしました。
従来の板ガラス製造方法よりも高品質で、低コストな板ガラスを大量生産できるようになったのです。
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フロートガラス製法の影響
フロートガラス製法の誕生により、建築、自動車、家電など様々な分野でガラス利用が拡大しました。
現代社会におけるガラスの普及は、フロートガラス製法の発明なしにはあり得なかったと言えるでしょう。
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