海外で人気のナショナル ジオグラフィック TVの企画で、「強化ガラスを割ることができるのはどの道具?」という興味深い実験が行われました。
今回はその実験結果を順に解説しながら、強化ガラスの特性と、なぜ特定の道具だけがガラスを割ることができたのかを深掘りしていきます。
※記事内の画像出典:YouTube「ナショナル ジオグラフィック TV」より抜粋

目次
実験の概要
この企画では、4人の参加者が強化ガラスの上に立ち、司会者が以下の道具を使ってガラスを叩くというものでした。
(安全には最大限配慮され、命綱も装着されています。)
※あくまで専門家による企画であり、危険ですので絶対に真似をしないでください
実験で使用された道具は以下の4つです。
- A. ハンマー
- B. 金槌
- C. ボウリングの球
- D. 野球のバット
ハンマー:定番の道具が試される!
まず最初に試されたのは、幅広い場面で活躍する定番の道具、ハンマーでした。
重さもあり、叩けば簡単に割れそうに思えますが、果たして強化ガラスにヒビを入れることはできたのでしょうか?

ハンマーの結果と理由
結果は、強化ガラスは割れませんでした。
なぜ割れなかったのか? ハンマーの打撃面は比較的平らで、広い範囲に衝撃が分散されます。
強化ガラスは、表面に圧縮応力層を持つことで、この広範囲にわたる衝撃を効率的に吸収・分散する能力に優れています。
そのため、ハンマーのような道具では、ガラス全体の強度を上回るほどの集中した力を加えることが難しかったのです。
金槌:形状が鍵を握るのか?
次に登場したのは、先が尖った特徴的な形状の金槌でした。
この鋭利な先端が、強化ガラスの強固な表面を打ち破ることができるのでしょうか?
もしこれが割れるとすれば、その形状に秘密があるはずです。

金槌の結果と理由
強化ガラスを割ることに成功しました!
なぜ割れたのか?
これが今回の実験の最大のポイントです。
金槌の先端は非常に鋭利であり、打撃の際に一点に力が集中します。
強化ガラスの強度は、衝撃が分散されることによって保たれていますが、ごく狭い範囲に極めて高い圧力が加わると、その防御機構を突破されてしまいます。
一点に集中した力は、ガラスの表面にある圧縮応力層を貫通し、内部の引張応力層に到達。
結果として、ガラス全体に亀裂が走り、破壊に至ったのです。
これは、車の窓ガラスを割る際に使用される脱出用ハンマー(レスキューハンマー)の先端が尖っている理由と同じ原理です。

野球のバット:スポーツ用品のパワーは?
順番が前後して、次に試されたのは、力強く振り下ろすことができる野球のバットでした。
運動エネルギーを乗せて叩きつければ、その破壊力は侮れません。
しかし、強化ガラスを相手に、バットは有効な道具となるのでしょうか?

野球のバットの結果と理由
結果は、強化ガラスは割れませんでした。
バッドが折れる程の衝撃にも関わらず、なぜ割れなかったのか?
野球のバットも、その打撃面は丸く、比較的広い範囲に衝撃が加わります。
また、しなりのある素材であるため、衝撃エネルギーの一部がバット自体に吸収されてしまう可能性もあります。
重い鈍器ではありますが、これもまた力が一点に集中しないタイプの衝撃であるため、強化ガラスの堅牢さを打ち破ることはできませんでした。

ボウリングの球:重さの力は通用するのか?
最後に試されたのは、かなりの重量があるボウリングの球でした。
ずっしりとした重さで叩きつければ、その衝撃で強化ガラスもひとたまりもないように思えますが、果たしてどうでしょうか…?

ボウリングの球の結果と理由
結果は、やはり強化ガラスは割れませんでした。
なぜ割れなかったのか?
ボウリングの球は確かに重いですが、その表面は滑らかで広い接触面を持っています。
ハンマーと同様に、落下による衝撃は広範囲に分散されてしまいます。
強化ガラスは重い物体からの衝撃にも非常に強い耐性を持つように設計されているため、たとえ質量が大きくても、力が一点に集中しない限り、簡単に割れることはありません。

実験からわかる強化ガラスの秘密
この実験は、強化ガラスの特性を非常に分かりやすく示してくれました。
強化ガラスは、一般的なガラスと比較して、広範囲にわたる衝撃や圧力には非常に強いという特性を持っています。
しかし、一点に集中する鋭利な衝撃には弱いという側面があるのです。
私たちの身の回りにある強化ガラス製品も、この特性を理解した上で使用することが大切です。
今回の実験はプロの監修のもと行われたものであり、危険を伴う行為ですので、決して真似をしないでくださいね。
