防火戸の設置基準とは?設置が必要なケースや場所も交えて解説します

防火戸は必ず設置しなければならないのか?

防火戸は火災による被害を抑えるために設置が必要なものです。建築物に関する各種法令には建物の安全性について多くの規定があります。その中に定められている防火設備に関する規定により、防火戸の設置が必要な場合のルールが定められています。

結論からお伝えすると「防火戸は必ず設置しなければいけない訳ではありません」。しかし細かなルールが定められているため、そこへ当てはまる場合には設置が必要となります。

では、どういった場合に設置が必要となるのか1つ1つのルールを詳しく解説していきます。

建築基準法が定める防火設備とは

防火設備とは、遮炎性(炎を通さない特性)を持つ設備の中でも、国が定める基準を満たしているもので、国土交通省が定めた火災が発生してから一定時間以上、炎を防火戸の外へ出さないなどの構造に合っているもの、または国土交通省から認定を受けているものとなっています。
具体的には延焼を防止するのに必要な袖壁や塀、鉄製網入りガラスを用いたドアなどが防火設備とされています。

そんな防火設備には「特定防火設備」と「防火設備」があります。
「特定防火設備」と「防火設備」にはどんな違いがあるのか?それぞれ解説していきます。

特定防火設備

火災が発生した際に、火炎が1時間以上その設備から外へ漏れ出ない構造のものと規定されています。
防火戸と聞いて思い浮かべる一般的なイメージの防火戸はこちらの特定防火設備となっています。

具体的には人が開いた場合のみに開き、普段は閉鎖されている常時閉鎖型防火戸と普段は防火戸が収納され、火災時に煙感知器などに反応して閉鎖するタイプの随時閉鎖型防火戸の2種類があります。

防火設備

特定防火設備が火災を遮る時間が1時間とされているのに対して、防火設備は20分以上、火炎がその設備の外へ漏れ出ない構造のものと規定されています。
こちらは種類も多く網入りガラス、防火シャッターも防火設備とされています。

最近のトレンドはガラス製の防火戸!

防火戸といえば、熱を通さない、金属製の頑丈な扉をイメージされる方も多いでしょう。
しかし、最近では、ガラス製の防火戸も増えてきています。
ガラスの場合、透明で見た目がすっきりしているので、防火設備としての機能はもちろんのこと、建物の見た目も損なうことがないため、注目を集めています。

防火戸に用いるガラスの種類と関係法規

防火戸として用いられるガラスの代表例としては、「ヒシワイヤ」「ピラン」「マイボーカ」といったものが挙げられます。

ヒシワイヤは、いわゆる網入りガラスの一種で、遮炎性に優れています。
30分炎を遮ることのできるという、建築基準法施行令第107条第2、3号で規定された基準を満たしており、屋根などによく用いられます。

ピランは、ワイヤレスで透明度の高いガラスです。
60分加熱されても大丈夫という、建築基準法施行令第112条第1項の規定を規定を満たしており、特定防火設備として利用可能です。

マイボーカは、ワイヤレスの耐熱性ガラスです。
強化ガラスに加工されているため、万が一、ガラスが割れてしまっても破片が鋭利にならず、安全です。
建築基準法第2条第9号の2ロなどの基準を満たしており、防火設備として開口部に設置できます。

防火戸が必要となるケース

では、どういった場合に防火戸が必要なのか?をこちらで解説します。
まず大きく2つに分けられた防火地域か準防火地域かで防火戸が必要か不要かに分けられます。

更に細かく防火戸が必要かどうかを確認する場合には建物の広さや階数が関わってきます。
以下で1つ1つ分かりやすく解説していきます。

準防火地域の基準

  • 防火地域の外で4階建て以上
  • 延べ面積が1,500平方メートル以上

上記の条件の建物を建てる場合は耐火建築物にする必要がある。

延べ面積が500平方メートル以下ならば、一般的な木造2階建ての他、一定の防火上の基準を満たしていれば木造3階建ても建築できる。
防火地域と比べて規制の緩やかな地域。

防火地域の基準

  • 商業施設、ターミナル駅、銀行など都市機能が集中している市街地の中心部
  • 幹線道路沿いの商業地域

以上のような地域が該当します。3階建て以上、または延べ面積が100平方メートルを超える建物を立てる場合は耐火建築物にする必要があると定められています。
ただし2階建て以下で延べ面積が100平方メートル以下の場合は準耐火建築物でも良いとされています。

防火戸を設置すべき場所

続けて、防火戸を設置すべき建物かどうかの確認に必要な項目を1つ1つお伝えしていきます。

近くの建物からの出火により延焼する可能性がある場所

近くの建物で火災が発生し、出火した際に火が外壁をつたって燃え広がる恐れのある耐火建築物、もしくは耐火建築物の開口部(窓や出入り口)には、防火戸を設置しないければいけないことになっています。

基準の広さを超えたスペース

主要な構造部分が耐火構造の建物と準耐火建築物では、水平方向に燃え広がるのを防止することと避難人数の制限の為、建物内のスペースは階数などに応じて、防火戸で特定の広さに区画しなければなりません。

階数では11階以上の高層と10階までの中低層で区画面積と必要な防火戸が変わってきます。
区画一つの大きさは緩い条件では1500平方メートル以内、厳しい条件だと100平方メートルと建物の構造により要件が異なっています。

竪穴空間をつながっている場所

階段、エレベーター、ダクトなどのスペースが該当します。
ここで火災が起こると、建物全体に火が回る恐れがあります。
その為、竪穴空間へ繋がる場所には耐火構造を有する壁や遮煙性能のある防火戸の設置が必要。

地下施設

地下施設は火災が起きた場合に逃げ場がなくなる可能性があるので、耐火構造の壁や遮煙性能のある防火戸による区画が必要。
自治体によってルールが異なります。

用途の異なる空間が融合した建物

駐車場と店舗、店舗と事務所が一体となった建物などの場合、それぞれの用途ごとに準耐火構造の壁や、遮煙性能のある防火戸で区画する必要があります。

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