今回はちょっとした番外編として、普段扱っている「ガラス」ではなく、科学の話題をご紹介します。
「ガラス転移点(Tg)」という言葉を聞いたことはありますか?
名前に「ガラス」とついているので、ガラスそのものの温度特性を指すように思えますが、実は違います。
「ガラス転移点(Tg)」は、プラスチックや樹脂などの材料が柔らかくなったり硬くなったりする温度を指す用語です。
目次
💡 ガラス転移点(Tg)とは?
ガラス転移点(Tg)とは、プラスチックや合成樹脂(ポリマー)が「硬くて動かない状態」から「少し柔らかく、動きやすい状態」に変わる温度のことです。
例えば、プラスチック製のお弁当箱を電子レンジで温めると、少しふにゃっと柔らかくなることがありますよね?
これはプラスチックがガラス転移点を超えたために起こる現象です。
🔍 ガラス転移点と融点の違い
「温度で変化するなら、融点(溶ける温度)と同じじゃないの?」と思うかもしれませんが、ガラス転移点と融点はまったく違います。
- ガラス転移点(Tg): 固い状態 → 柔らかくなる温度
- 融点(Tm): 固体が完全に液体になる温度
つまり、Tgでは素材が「ぐにゃっ」と柔らかくなる程度ですが、融点では「ドロドロに溶ける」状態になります。

⚙️ ガラス転移点の例
ガラス転移点は素材によって異なり、身近な製品にも関係しています。
いくつか例を見てみましょう。
- ポリスチレン(PS):約100℃ → 食品トレーやカップの素材。熱で柔らかくなりやすい。
- ポリカーボネート(PC):約150℃ → ヘルメットやCDに使われ、高温でも硬さを保つ。
- ポリエチレン(PE):約−100℃~−20℃ → ラップやビニール袋。低温でも柔軟性がある。
📊 ガラス転移点(Tg)の一覧表
以下は、代表的なプラスチックや樹脂のガラス転移温度の一覧です。
素材名 | ガラス転移温度(Tg) | 主な用途 |
---|---|---|
ポリスチレン(PS) | 約100℃ | 食品トレー、カップ |
ポリカーボネート(PC) | 約150℃ | ヘルメット、CD |
ポリプロピレン(PP) | 約−20℃〜0℃ | タッパー、キャップ |
ポリエチレン(PE) | 約−100℃〜−20℃ | ビニール袋、ラップ |
アクリル(PMMA) | 約105℃ | 看板、ディスプレイ |
ナイロン(PA) | 約40℃〜70℃ | 繊維、ギア |
PVC(ポリ塩化ビニル) | 約80℃ | 水道管、配線カバー |
エポキシ樹脂 | 約120℃ | 接着剤、コーティング |
※ここに記載されているガラス転移点(Tg)の温度は、一般的な範囲を示すものであり、材料の組成や製造方法、測定条件などによって変動する場合があります。より正確な情報が必要な場合は、専門的な資料やメーカーのデータシートを参照してください。
このように、素材ごとにガラス転移点が異なるため、製品の耐熱性や柔らかさが変わります。
🛠️ ガラス転移点と製品設計の関係
ガラス転移点は、プラスチック製品やゴム製品の耐久性や柔軟性に大きな影響を与えます。
- 寒い地域で使う素材はTgが低いものが適しています。
→ 寒くても柔らかいままなので、ひび割れしにくいです。 - 夏場や高温環境で使う製品はTgが高いものが良いです。
→ 熱で変形しにくく、形を保てます。
これを知らずに設計すると「夏場にプラスチックが変形する」「寒い冬にゴムが割れる」といったトラブルが起こりやすくなります。
🔍 ガラス転移点と本物のガラスの関係
記事の冒頭でご説明した通り、「ガラス転移点(Tg)」は主にプラスチックや樹脂などの高分子材料に使われる用語です。
しかし、もちろん「ガラス(硝子)」にもTgは存在します。
例えば、建築用や窓ガラスなどに使われるフロートガラスのTgは約550℃前後です。
ただし、実際にガラス加工で重要視されるのは、Tgではなく軟化点や融点です。
- フロートガラスのTg:約550℃
- 軟化点:約720〜750℃ → ガラスが柔らかくなり始める温度
- 融点:約1400℃ → ガラスが完全に液体状になる温度
このように、ガラスのTgは樹脂と比べて非常に高温であり、普段のガラス工事ではTgを意識する機会は少ないかもしれません。

🌟 まとめ
ガラス転移点(Tg)とは、プラスチックなどの素材が「固い状態から柔らかく変化する温度」です。
普段は意識しないかもしれませんが、家電や日用品にもこの温度が深く関係しています。
これからは、ガラス転移点を意識して製品を見ると面白いかもしれませんね!
