建築基準法で定められた「ガラスの安全基準」とは?

建築物に使用されるガラスには、安全性に関する厳格な基準が定められています。

これらは主に「建築基準法」および、関連法令・通知に基づいており、建築物の用途や場所、設置条件によって適用されるガラスの種類や仕様が異なります。

本記事では、ガラスの安全基準に関する法律の基本的な知識を整理しつつ、実務上で注意すべきポイントを解説します。

建築基準法におけるガラスの位置づけ

建築基準法そのものには「ガラス」という言葉が頻出するわけではありませんが、「開口部」「防火設備」「落下防止措置」「安全上有害となるおそれのある開口部」など、ガラスと深く関わる用語が数多く登場します。

つまり、ガラスは建築部材として明示的に定義されているというよりも、「必要な性能を満たす材料」としての扱いを受けています。

また、建築基準法施行令や国土交通省の告示、地方条例などを通じて、実際のガラス選定においては具体的な安全性能が要求されます。

これにより、設計者や施工者が法令遵守を意識しながら最適なガラスを選定することが可能となります。

落下・転落防止の観点からの安全基準

特に住宅・ビル等の2階以上における開口部(窓や欄干など)では、誤って人が転落するリスクを軽減するための安全措置が求められます。

建築基準法施行令第126条には、バルコニーなどの手すり部分の高さや構造、開口部の形状について規定があり、その一部にガラスの使用が含まれることがあります。

▶ 安全上有害となるおそれのある開口部

開口部の下端が床面から1.1m未満の位置にある場合など、人が誤って転落するおそれのある箇所では、合わせガラスや強化ガラスなどの安全ガラスの使用が推奨される、あるいは求められることがあります。

建築基準法施行令 第126条より

“建築物の階数が地上2以上である場合において、2階以上の部分の外側に面する窓その他これに類する開口部であつて、その下端が床面からの高さが1.1メートル未満であるものについては、転落を防止するための手すりその他の防護措置を講じなければならない。”

国土交通省のガイドライン等では、転落防止のために破損時に破片が飛び散らない”合わせガラス”が望ましいとされる場面もあり、特に学校・病院・福祉施設ではこの種のガラスが義務付けられることもあります。

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防火・耐火の観点からのガラスの規定

都市部などの防火地域・準防火地域に建築物を建てる場合、開口部に使用するガラスには”防火設備”としての性能が求められます。

建築基準法第2条第九号の二では「防火設備」が以下のように定義されています。

“防火設備:火災時における建築物の開口部からの火の進入を防止することができるように設ける戸、シャッターその他これらに類するものをいう。”

防火設備に使われるガラスには一定の耐熱性能や飛散防止性能が求められます。

これに適合するガラスの例としては以下が挙げられます。

  • 網入りガラス(ワイヤー入り)
  • 耐火・耐熱強化ガラス
  • 特殊中間膜を用いた防火合わせガラス(例:ピロベルなど)

これらは、火災時の炎の貫通や煙の漏洩を一定時間防ぐことが求められ、国土交通大臣の認定を受けた製品でなければなりません(大臣認定制度)

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ガラスの飛散防止と安全措置

地震や衝突によってガラスが割れた際、破片が飛散して人を傷つけるリスクがあります。

そのため、建築物に使用するガラスには飛散防止措置が重要視されるようになっています。

例えば

  • 合わせガラス:中間膜によって破片が飛び散りにくい
  • 飛散防止フィルム付きガラス:既存のガラスにフィルムを貼ることで安全性を確保

特に震災対策として、既存ビルの大開口部ガラスに対して後付けで飛散防止フィルムを施工する事例が増えています。

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実務上の注意点

  • 法令を満たすだけでなく、使用環境・対象者に応じたガラス選定が必要
  • 地域によって条例が異なるため、自治体の確認は必須
  • 改修工事の場合は”既存不適格”の扱いとなる可能性があるため慎重な対応が必要
  • 特に幼稚園・高齢者施設などでは利用者の特性に応じたガラスの安全性が必須

まとめ

ガラスは建築物における重要な構成材料であり、その安全性は建築基準法をはじめとする多くの法令に支えられています。

施工ミスや設計上の不備が重大事故につながる可能性があるからこそ、設計者・施工者・施主の全員が「正しい知識」を共有することが不可欠です。

今後も、技術革新や社会情勢の変化に応じて法令はアップデートされていきます。

本記事が、関係者の皆様にとって参考となり、安全な建築づくりの一助となれば幸いです。

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