防煙垂れ壁(防煙垂壁)は、火災時に煙の拡散を防ぎ、安全な避難経路を確保するための重要な設備です。
しかし、適切な管理や点検が行われないと、劣化による落下事故が発生し、利用者の安全を脅かす可能性があります。
本記事では、防煙垂れ壁の役割や設置基準、劣化によるリスク、そして適切な管理方法について解説します。
目次
防煙垂れ壁の役割と設置基準
防煙垂壁とは
防煙垂壁(ぼうえんたれかべ)とは、建物内部で発生した煙の拡散を防止するために設けられた垂れ壁のことです。
建築基準法では「防煙壁」として規定されており、煙が一定のエリアに広がらないように区切る役割を果たします。
特に、排煙設備が必要な施設では、500㎡ごとに防煙区画を設けることが求められており、この区画の境界に防煙垂壁を配置することになります。
火災時には、一酸化炭素や有害ガスを含む煙の拡大を防ぎ、避難のために十分な時間を確保できるようにします。
防煙垂れ壁の構造
防煙垂れ壁は、建築基準法で定められた以下の要件を満たしている必要があります。
- 不燃材料を使用していること
- 不燃材料で覆われていること
この要件をクリアする素材の中で、「ガラス」がよく使われています。
ガラスは、建築基準法の告示1,400号において「不燃材料」として認められており、この告示に基づく不燃材料には17種類が定められています。
防煙垂れ壁の高さ
建築基準法によると、防煙垂れ壁(防煙壁)として認められるためには、通常500ミリメートル以上の高さが求められます。
しかし、次のいずれかの条件を満たす不燃性の戸(不燃戸)の上に設置される場合、高さが300ミリメートルでも防煙垂壁として認められます。
- 常に閉じている防火戸
- 煙感知器と連動して自動的に閉じる防火戸
このように、設置条件を満たすことで、防煙垂壁は火災時の煙の拡散を抑え、避難をサポートする重要な構造となります。
劣化による落下事故のリスク
防煙垂れ壁は、長期間にわたり建物内に設置されるため、経年劣化が避けられません。
天井部の高い場所にあることから、意識しないと普段は目に入ってこない箇所かと思います。
特に、吊り下げ金具や固定部の劣化は、構造の安定性を損ない、最悪の場合、落下事故を引き起こす可能性があります。
実際に、2024年11月、札幌市営地下鉄南北線さっぽろ駅のホームで、天井から吊り下げられていたガラス製の防煙垂れ壁が落下する事故が発生しました。
この事故では、設置から32年間一度も点検が行われておらず、吊り下げ金具の劣化が原因と推定されています。
Yahoo!ニュース
「判明「32年間未点検」地下鉄さっぽろ駅で落下のガラス製「防煙垂壁」ルールもなし 札幌市」
このような事故は、利用者の安全を脅かすだけでなく、建物の信頼性にも影響を与えます。
適切な管理と点検の重要性
防煙垂れ壁の安全性を確保するためには、以下の点に留意した管理と点検が重要です。
定期点検の実施
設置後の定期的な点検を計画し、劣化や損傷の有無を確認します。
点検記録の保存
点検結果を詳細に記録し、次回の点検や修繕の参考とします。
これにより、劣化の進行状況を把握しやすくなります。
劣化箇所の早期修繕
劣化や損傷が発見された場合、速やかに修繕や交換を行い、事故のリスクを未然に防ぎます。
材質の見直し
ガラス製の防煙垂れ壁は、地震や経年劣化による落下リスクが指摘されています。
そのため、より安全性の高い不燃シート製の防煙垂れ壁への交換を検討することも有効です。
「フェンスクリアー」割れない!軽い!安全!の防煙垂れ壁
「フェンスクリアー」はガラスではなく、不燃膜シート材を使用しているため、割れることがなく非常に軽いのが特長です。
従来のガラス製防煙垂れ壁と比べると重量は10分の1以下と非常に軽い設計です。
まとめ
防煙垂れ壁は、火災時の煙の拡散を防ぐ重要な設備ですが、適切な管理や点検が行われないと、劣化による落下事故が発生するリスクがあります。
建築基準法に基づく設置基準を遵守するとともに、定期的な点検とメンテナンスを徹底し、利用者の安全を確保することが求められます。
また、材質の見直しや新たな技術の導入も検討し、より安全で信頼性の高い建築環境を維持していくことが重要です。
防煙垂れ壁の管理を適切に行うことで、火災時の被害を最小限に抑え、建物利用者の命と安全を守ることができます。
最新の情報と技術を取り入れ、常に安全性の向上に努めることが求められます。
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