「合わせガラス」と聞くと、多くの方は「割れても飛び散らない、安全なガラス」というイメージを持つのではないでしょうか。
もちろんその通りなのですが、実はその安全性を支え、様々な機能を与えている主役は、ガラスそのものではなく、間に挟まれた「中間膜」なんです。
今回は、合わせガラスの心臓部ともいえる中間膜にスポットを当てて、その種類や特徴を解説していきます。
目次
合わせガラスと中間膜の基本
合わせガラスの構造は、シンプルです。
2枚以上の板ガラスの間に、強靭な樹脂製の中間膜を挟み込み、熱と圧力をかけてピタッと圧着させています。
一般的に使われるのはPVB(ポリビニルブチラール)という素材。
この膜は柔軟で、ガラスと非常に仲が良く、強力にくっつく性質を持っています。
万が一ガラスが割れても、破片がこの膜にしっかり吸着し続けるので、鋭い破片が飛び散りません。
この「粘り強さ」が、安全性の秘密なんです。
目的で選べる|中間膜の種類と製品例
中間膜の「厚み」を変えたり、「特殊な加工」を施したりすることで、合わせガラスは様々な機能を持つことができます。
AGCの製品を例に、解説していきます。
安全性の基本「飛散防止」
もっともスタンダードなタイプです。
- 製品例:ラミセーフ® ガラスの破損時に破片が飛散しにくい安全性を備えています。一般住宅からビル、店舗まで幅広く使われる、合わせガラスの原点ともいえる製品です。
AGC ラミセーフ®
https://www.asahiglassplaza.net/products/lamisafe
防犯性能を高めた「厚い膜」
中間膜を厚くすることで、貫通に対する抵抗力を高めたタイプです。
- 製品例:ラミセーフセキュリティー® 厚さ30mil(約0.75ミリ)以上の特殊フィルムを使用。通常のタイプよりも貫通しにくいため、防犯性能(セキュリティーグレード)を高めたい場所に採用されます。
AGC ラミセーフセキュリティー®
https://www.asahiglassplaza.net/products/lamisafe_security/
防災・高度なセキュリティーを担う「さらに厚い膜」
近年、台風などの自然災害への対策として注目されているのがこのタイプです。
- 製品例:ラミセーフセキュリティーシェルター™ 厚さ60mil(約1.5ミリ)以上という非常に厚い特殊フィルムを使用。衝突物に対する高い耐貫通性能を持ち、防災性能と防犯性能の両方を高い次元で両立させています。
AGC ラミセーフシェルター®(ラミセーフシェルター®BL)
https://www.asahiglassplaza.net/products/lamisafe_shelter/
デザインと機能を両立する「装飾・着色膜」
膜そのものに色やパターンを施すことで、空間の演出やプライバシー保護を可能にします。
- 製品例:カラーラミセーフ 乳白色やブラウンに着色された膜を使用します。視線をコントロールしながら、カラー表現を楽しむことができます。
AGC カラーラミセーフ
https://www.asahiglassplaza.net/products/color_lamisafe/
- 製品例:ラミトーン®(クリスタルカラー / グラフィカルパターン) 透明なカラーフィルムや、パターンが施されたフィルムを挟み込みます。オフィスや店舗の間仕切りなどで、透過性を自由にコントロールしながら装飾効果を高めることができます。
AGC ラミトーン®
https://www.asahiglassplaza.net/products/lamitone_crystal_colorseries
【コラム】合わせガラスの誕生は「偶然の失敗」から?
合わせガラスの歴史は、100年以上前のフランスで起こった「ちょっとした事故」から始まりました。
科学者のベネディクトゥス氏が、実験室でフラスコをうっかり床に落としてしまったのです。
ところが、粉々になるはずのフラスコが、形を保ったまま割れていませんでした。
実はフラスコの中に残っていた「ニトロセルローズ」という液体の膜が、ガラスの破片をしっかり繋ぎ止めていたのです。
この発見が、後に「割れても安全なガラス」として製品化され、今の私たちの生活を守る技術へと繋がっていきました。
用途に合わせた「膜」の選び方
合わせガラスを検討するとき、中間膜の選び方ひとつで、その場所の安全性や快適さは大きく変わります。
住宅、ビル、店舗、オフィスなど、その建物で「解決したい課題」に合わせた選定が、納得のいく仕上がりへの第一歩となります。
- 標準的な安全性とUVカットを求める場合 (例:ラミセーフ®) 万が一の破損時にも破片が飛散しにくいため、日常的な安全確保や紫外線対策を優先したい場所に最適です。
- 空き巣対策などの防犯性を重視する場合 (例:ラミセーフセキュリティー®) 30mil(約0.75ミリ)以上の膜厚を持たせることで、不法侵入に対する耐貫通性能を高めることができます。
- 災害対策(防災)も兼ね備えたい場合 (例:ラミセーフ®シェルター) 60mil(約1.5ミリ)以上の極厚フィルムが、台風などの飛来物から室内を守る高い防災性能を発揮します。
- 静かさ・集中できる環境を求める場合 (例:ラミシャット®) 遮音性能に特化した中間膜が、道路沿いの騒音対策や会議室のプライバシー保護に貢献します。
- デザインや視線制御をしたい場合 (例:カラーラミセーフ / ラミトーン®) 乳白色やブラウン、あるいは多彩なカラーやパターンフィルムを用いることで、光を採り入れつつ、空間を美しく彩ったり視線をスマートにカットしたりすることが可能です。
「透明なガラス」という点では同じに見えても、その中身(中間膜)の特性を知ることで、より目的・用途に沿った選択ができるようになります。
まとめ
合わせガラスの価値は、その内側にある「中間膜」に凝縮されています。
安全、静か、涼しい、そして美しい。中間膜の進化によって、ガラスはただの板から、私たちの活動を支える「高機能な建材」へと進化を続けています。
普段何気なく使用しているガラスも、実はその「中身」に驚くような技術が隠されています。
次にガラス越しに景色を眺める時は、「中間膜」の存在を思い出してみてはいかがでしょうか。































