チェコの首都プラハに建つ「ダンシング・ハウス(Dancing House)」は、世界的に知られるガラス建築のひとつです。
歴史的建築が密集するプラハの街並みの中で、まるで動いているかのような造形を持つこの建物は、完成から長い年月を経た現在も、都市景観の中で強い存在感を放っています。
※記事内画像 出典:Wikipedia
戦争の記憶と再生の象徴としての建築
ダンシング・ハウスが建つ場所は、第二次世界大戦中の空襲によって破壊された建物の跡地でした。
戦後長く空き地となっていたこの場所に、あえて新しい時代を象徴する建築を建てるという計画は、プラハという都市にとって大きな意味を持っていました。
設計を担当したのは、チェコ出身の建築家ヴラド・ミルニッチと、アメリカの建築家フランク・ゲーリーです。
両者の協働によって計画は進められ、1996年にダンシング・ハウスは完成しました。
「踊る建物」と呼ばれる理由
この建物が「ダンシング・ハウス」と呼ばれる最大の理由は、その外観にあります。
建物は大きく二つのボリュームで構成されており、一方は曲線を多用したガラスファサード、もう一方は比較的直線的で重厚感のある構成となっています。
この二つの要素が寄り添う姿は、踊る男女のペアを想起させることから、映画俳優フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースになぞらえ、「フレッド&ジンジャー」という愛称でも知られています。
湾曲ガラス(曲げガラス)が生み出す建築表現
ダンシング・ハウスを象徴する要素のひとつが、前面に用いられた湾曲ガラス(曲げガラス)です。
直線的なガラスカーテンウォールとは異なり、柔らかな曲面を描くことで、建物全体に動きのある印象を与えています。
ガラスは、時間帯や天候によって光の映り込み方が変化し、同じ場所に立っていても異なる表情を見せます。
こうした視覚的な変化が、「建物が踊っているように見える」という印象をより強めています。
歴史的景観との共存
プラハは、景観保全に対する意識が高い都市として知られています。
その中でダンシング・ハウスは、周囲の歴史的建築と調和しつつも、あえて同化しない存在として計画されました。
過去の建築様式を模倣するのではなく、現代建築としての表現を明確に示すことで、「歴史と現代が並び立つ都市景観」という新しい価値を提示しています。
現在の用途と建築としての評価
完成後、ダンシング・ハウスはオフィス機能を中心に利用され、現在ではホテルや屋上レストランも併設されています。
観光名所としてだけでなく、実際に使われ続けている建築である点も、この建物の特徴といえるでしょう。
ダンシング・ハウスは、ガラス建築が単なる透明な外装にとどまらず、建築のコンセプトそのものを表現する素材になり得ることを示しました。
その姿は、現代建築が歴史ある都市とどのように向き合うべきかを考える上で、今なお示唆を与え続けています。
































