窓、ドア、テーブル、棚板など、私たちの身の回りにはさまざまなガラス製品があふれています。
しかし、ガラスは衝撃に弱く、用途に合わない厚さのものを選んでしまうと、簡単に破損してしまう危険性も。
安全に、そして安心してガラスを使うためには、「厚み」が非常に重要なポイントになります。
この記事では、ガラスの厚さとその強度・重さの関係、そして日本工業規格(JIS)で定められている許容差について解説します。
この記事を読んで、ぜひガラス選びの参考にしていただけますと幸いです。
目次
ガラスの厚さの基本
まず、ガラスの厚さにはどのような種類があり、どのような基準が設けられているのか、基本的な知識から見ていきましょう。
ガラスの厚さの種類
一般的に流通しているフロートガラス(板ガラス)は、1mm刻みで2mm、3mm、4mm、5mm、6mmとあり、その後は8mm、10mm、12mm、15mm、19mmといった厚さが製造されています。
産業用には1mm以下の非常に薄いものから、2cm近くある厚手のものまで多種多様です。
フロートガラス以外の種類では、型板ガラスに2mm、4mm、6mm、網入りガラスには6.8mmといった規格がよく使われています。
また、強化ガラスはフロートガラスを二次的に熱処理して製造されます。
そのため、製造可能な厚さはフロートガラスと同様ですが、強度を確保するため3mm以下の厚さでは製造できません。
3mm以下の薄い強化ガラスが必要な場合は、特別な「化学強化ガラス」などがあります。

ガラスの厚さの許容差とJIS規格
ガラス製品の品質を保証するため、日本工業規格(JIS)によって、ガラスの厚みには許容差(公差)が定められています。
これは、実際に製造されたガラスの厚さが、指定された厚みに対してどの程度の誤差まで許容されるかを示したものです。
例えば、JIS R 3202(フロート板ガラス)では、厚さごとに異なる許容差が設けられています。
これにより、規格を満たさない品質の低いガラスが流通することを防ぎ、消費者が安心して製品を使用できるようになっています。
- JIS規格における厚さの許容差の例(フロート板ガラス JIS R 3202より一部抜粋)
- 呼び厚さ 2mm: ±0.2mm
- 呼び厚さ 3mm: ±0.2mm
- 呼び厚さ 5mm: ±0.3mm
- 呼び厚さ 8mm: ±0.3mm
- 呼び厚さ 12mm: ±0.4mm
このように、ガラスは厳格な品質管理のもとで製造されており、これらの規格をクリアすることで、一定の品質と安全性が保たれています。

ガラスの強度と重さの考え方
ガラスは非常に脆く、割れやすい特性を持っています。
さらに、破損時には危険な破片となって飛び散る可能性もあります。
そのため、ガラスを選ぶ際には、用途に応じて適切な強度と安全性を考慮することが不可欠です。
強度選定の複雑さ
ガラスの強度設計は、木材や鉄鋼とは異なり非常に複雑です。
同じ厚さのガラスであっても、個体差による強度のばらつきがあるため、計算が難しいのです。
専門的な強度設計では、以下のような要素を詳細に考慮します。
- 加わる力の種類と分散具合: どのような力が、どの程度、どのように加わるのか。
- ガラスの支持方法: 四辺で支えるのか、一部のみで支えるのかなど、設置状況による影響。
- 力の継続期間: 短期的な衝撃か、水槽のように長期的に圧力がかかるのか。
- たわみ: 割れないまでも、たわみが生じることで外観や使用感が損なわれないか。
- 安全率: 計算上は問題なくても、個体差や予期せぬ要因による破損を防ぐための余裕度。
一般の家庭でここまでの計算をするのは現実的ではありませんが、これらの要素がガラスの強度に大きく影響することを理解しておくことが大切です。
厚さが増すほど、ガラスの曲げや衝撃に対する抵抗力、つまり強度は向上します。
これは、厚みが増すことでガラス全体の質量が大きくなり、外部からの力をより広い範囲で分散・吸収できるようになるためです。
ガラスの重さについて
ガラスは厚みが増すほど、その重さも比例して増加します。
例えば、同じ面積のガラスでも、厚さが2倍になれば重さも約2倍になります。
- ガラスの比重: 約2.5g/cm³(水が1g/cm³なので、水の2.5倍の重さ)
この重さは、設置する場所の構造にかかる負担や、搬入・設置作業の難易度にも影響します。
特に大型のガラスや厚手のガラスを選ぶ際には、その重さも考慮に入れる必要があります。

用途別|ガラスの厚さの目安
それでは、具体的にどのような用途でどのくらいの厚さのガラスが選ばれているのかを見ていきましょう。
以下に、実務に役立つ厚さの目安をまとめました。
用途 | 推奨厚さ | 備考 |
額縁ガラス | 2mm | 屋内限定 |
窓ガラス(住宅) | 3~5mm | 地域・窓サイズで調整 |
棚板(小型) | 5mm | 支持位置による |
棚板(中~大型) | 6~8mm | 重量物なら10mmも検討 |
テーブル天板 | 8~12mm | 支持方法・サイズによる |
ガラスドア | 10~12mm | 強化ガラス推奨 |
歩行用(床) | 15mm以上 | 強化ガラス・飛散防止加工も必須 |
用途別の詳細な考え方
- 窓ガラス 一般住宅では、建築士の経験に基づき「このくらいの大きさならこの厚さ」と決められることが多いです。高層ビルなどでは、風圧に耐えるため、上層階ほど厚いガラスが使われます。風の強い地域や開口部の大きい窓には、厚めのガラスを選ぶのが安心です。
- 商業施設のガラス扉(自動ドアなど) 枠のないガラス扉には、10mm以上の厚いガラスが使われるのが一般的です。不特定多数の人が利用するため、安全率を高く設定し、万が一の事故に備えます。さらに、強化加工を施して強度を高めることで、破損時の危険性を軽減します。
- テーブルトップ(ガラス天板) テーブルの大きさ、支え方によって必要な厚さが変わります。全面を支えるカバー用のガラス天板であれば薄くても問題ないことが多いですが、両端のみで支える場合は、たわみや破損を防ぐために厚めのガラスを選ぶ必要があります。小さなテーブルでも、一般的には5mm厚以上が推奨されます。
- ガラスの棚板 何を載せるか(フィギュア、食器、本など)が厚さ選定の重要な要素です。重いものを置く棚板は、より厚く頑丈なものを選びましょう。また、支え方も強度に影響します。ガラスは経年によって小さな傷が増え、それが原因で突然破損することもあります。特に店舗など、破損が大きな問題となる場所では、より厚いガラスを選び、飛散防止フィルムを貼るなどの安全対策も検討しましょう。

まとめ
ガラスの厚さは、その強度、重さ、そして何よりも安全性に直結する重要な要素です。
「絶対に割れないガラス」というものは存在しませんが、用途、設置場所、そして予算などを総合的に考慮し、最も適切な厚さのガラスを選ぶことが大切です。
この記事が安全で快適なガラス製品選びの一助となれば幸いです。