ヒシワイヤ/クロスワイヤ|網入板ガラスの特徴と性能

建築物の開口部において、延焼防止を担う防火設備として広く採用されているのが網入板ガラスです。

現場では、ワイヤの組み方に応じて「ヒシワイヤ」「クロスワイヤ」といった名称で呼ばれることが多いです。

これらの名称は、国内大手メーカーであるAGC(AGC株式会社)が1950年代から使用している登録商標ですが、現在では網入板ガラスの代名詞として業界全体に浸透しています。

本記事では、製品の基本仕様と、防火設備としての重要な役割について知識を整理します。

AGC 網入板ガラスのラインナップ

AGCの網入板ガラスは、中に入っている金属網(ワイヤ)の組み方や、ガラス表面の仕上げによって、主に以下のバリエーションに分けられます。

ワイヤの形状と表面仕上げ

  • ヒシワイヤ(菱形格子)ワイヤを斜めに交差させた、菱形の格子模様を持つ製品です。
    網入板ガラスとして最も一般的な形状であり、あらゆる用途の防火区画や外壁開口部で広く活用されています。

  • クロスワイヤ(正方形格子)ワイヤを垂直・水平に交差させた、正方形の格子模様を持つ製品です。
    サッシのラインや建物の構造線と調和しやすいため、デザイン性を重視する現代的な建築に適しています。

それぞれ、以下の表面仕上げから選択可能です。

  • 磨(みがき): 両面を平滑に磨き上げた透明なタイプ。
  • 霞(かすみ): 片面に型模様を施した不透明なタイプ(型板ガラス)。

防火設備としての性能と役割

ヒシワイヤおよびクロスワイヤは、建設省告示第1360号に規定される防火設備用ガラスとして、延焼のおそれのある部位に使用できます。

その最大の役割は、火災が発生したときに炎が広がるのを防ぐ「遮炎性能」にあります。

なぜ「網」が入っているのか

通常のガラスは火災の熱を受けると割れて崩れ落ちてしまいますが、網入板ガラスは内部のワイヤが割れたガラスを保持します。

  • 炎を貫通させない: ガラスが脱落せず開口部を塞ぎ続けることで、炎や火の粉が反対側へ抜けるのを防ぎ、隣の建物への延焼を食い止めます。

  • 破片が落ちない: 破損しても破片が飛び散ったり、下に落ちたりしにくいため、避難経路の安全確保に寄与します。

仕様・性能スペック表

実務で参照される代表的な寸法および性能値は以下の通りです。

寸法表

商品名仕様呼び厚さ略号最大寸法 (mm)
クロスワイヤ磨(透明)6.8mmPCW2438 × 1829
クロスワイヤ霞(型板)6.8mmWKC2438 × 1829
ヒシワイヤ磨(透明)6.8mmPHW3658 × 2438
ヒシワイヤ磨(透明)10mmPHW103658 × 2438
特注:4600 × 2400
ヒシワイヤ霞(型板)6.8mmWKH2438 × 1829

熱・光学性能値

厚さ可視光透過率日射透過率UV透過率SC値η値U値
6.8mm82.1%73.2%54.3%0.910.805.8
10mm80.2%65.9%48.2%0.860.755.7

スペック参照:AGC https://www.asahiglassplaza.net/products/hisswire/

知っておきたい「網入りガラス」ならではの注意点

網入板ガラスは、ガラスの中に金属が閉じ込められている性質上、特有の現象が起こることがあります。

「熱」で割れる現象(熱割れ)

網入りガラスは、内部に封入されたワイヤの影響で日光の熱を吸収しやすく、普通のガラスよりも温度差に敏感です。

日差しによってガラスの中央部が高温になりワイヤが膨張しても、サッシに隠れた端(エッジ)の部分はあまり温度が上がらず膨張しません。

その結果、中央の膨張しようとする動きと、端の動かない状態との間に「引き裂くような力(熱応力)」が生まれ、ガラスが耐えきれなくなったところからヒビが入ります。

「サビ」で割れる現象(錆割れ)

ガラスの切り口から露出したワイヤが、湿気や水分によって腐食することで発生する破損です。

サッシの隙間から入り込んだ雨水や結露水が、毛細管現象によってエッジ部分に滞留し、ワイヤを酸化させます。

鉄サビは元の金属の数倍にまで膨張するため、その圧力が内側からガラスを押し割り、ヒビを引き起こします。

まとめ

AGCの「ヒシワイヤ」「クロスワイヤ」は、法的に定められた確かな防火性能を持ち、長年日本の建築を支えてきた信頼のブランドです。

実務においては、その遮炎性能を正しく活用すると同時に、網入りガラス特有の「熱割れ」や「錆割れ」のリスクを理解しておくことが不可欠です。

適切な仕様選定と確実な施工、そして維持管理を行うことで、建物の安全性と資産価値を長く保つことができます。

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