【網入りガラス】特徴や用途、注意点ついて詳しく解説!

建築物の安全性、特に防火対策において大切な役割を果たす「網入りガラス

普段から目にする機会は多いものの、その詳しい特性や注意点については、あまり知られていないかもしれません。

熱割れのリスクや防犯性の限界など、誤解したまま使用すると、思わぬトラブルにつながることもあります。

この記事では、網入りガラスが持つ防火性能から、網入りガラスの種類、そして知っておくべき注意点まで、詳しく解説していきます。

網入りガラスとは?その構造と基本的な特徴

網入りガラスとは、その名の通りガラスの内部に金属製の網(ワイヤー)が封入された板ガラスのことです。

一般的には、「ワイヤー入りガラス」とも呼ばれます。

網入りガラスの構造

製造過程で溶解したガラスの中に、格子状または菱形(クロス)状の金属線(通常は鉄線)を挿入し、一体化させて作られます。

この内部の金属網が、網入りガラスの最も重要な特徴である「防火性」をもたらします。

網入りガラスの主な特徴

  • 防火性能:これが最大の目的です。
    火災時にガラスが破損しても、内部の網がガラスの脱落を防ぎ、炎や煙の侵入を一時的に阻止します。

  • 飛散防止効果:災害時や衝撃でガラスが割れても、網が破片の飛散を抑えるため、人への被害を軽減します。

網入りガラスの防火性能の秘密

網入りガラスが防火ガラスとして認められているのは、火災時の性能に秘密があります。

火災時のガラス破損と網の役割

火災が発生し、窓ガラスが炎に晒されると、ガラスは急激な温度上昇にさらされます。

ガラスは熱膨張によって割れやすい性質を持つため、通常であれば熱割れを起こし、破片となって脱落してしまいます。

しかし、網入りガラスの場合は以下のような挙動を示します。

  1. 熱割れの発生:通常のガラスと同様に熱割れを起こします。
  2. 網による保持ガラスが割れても、内部の金属網がガラスや破片をしっかりと保持します。
    これにより、窓に穴が開いて炎や煙が隣接する建物や室内に侵入するのを防ぎます。
  3. 延焼防止ガラスの脱落が防がれることで、火災の延焼を一時的に食い止める時間稼ぎができます。
    これは、消防活動や避難の時間を確保するために非常に重要です。

網入りガラスの種類

網入りガラスには、封入されている網の形状やガラスの種類によって、いくつかの種類があります。

※防火認定の有無は製品によって異なるため、施工や設計の際には必ずメーカーや認定番号、性能証明書などを確認してください。

下記は一例になります。

菱ワイヤー(クロスワイヤー)

最も一般的に見られるタイプで、菱形に網が組まれています。

レトロな雰囲気があり、多くの場所で採用されています。

平ワイヤー(スクエアワイヤー/角ワイヤー)

正方形に網が組まれているタイプです。

菱ワイヤーに比べて、よりシンプルでモダンな印象を与えます。

線入りガラス(プロテックス/パラライン)

通常の網入りガラスとは異なり、より細いワイヤーが平行に配置されたタイプです。

主にガラスの飛散防止や、火災時の防煙垂れ壁などに使用されることが多いです。

意匠性が高く、特定用途向けに用いられることがあります。

網入りガラスのメリット・デメリット

防火性能に優れる網入りガラスですが、メリットだけでなくデメリットも存在します。

導入を検討する際は、これらの点を総合的に考慮することが重要です。

メリット

  • 優れた防火性能:火災時の延焼防止に最も効果的です。建築基準法で防火区画に指定された場所では必須となります。
  • 飛散防止効果:万が一割れた場合でも、破片が飛び散りにくいため、人身事故のリスクを低減します。
  • 比較的安価:防火ガラスの中では、特殊な防火ガラスに比べて比較的安価に導入できます。

デメリット

  • 熱割れのリスク:網入りガラスは、内部の金属網とガラスの熱膨張率の違いから、熱割れを起こしやすいという性質があります。
    直射日光が長時間当たる場所や、部分的に日陰になる場所、またエアコンの室外機から出る熱風が当たる場所などでは、熱割れのリスクが高まります。
  • 断熱性・遮熱性の低さ:網なしの単板ガラスと同様に、断熱性や遮熱性は高くありません。
    結露が発生しやすく、冷暖房効率も悪くなりがちです。
  • 防犯性の限界:網が入っているため「割れにくい」と思われがちですが、実際には通常のガラスと同様に簡単に割ることができます。
    網はあくまでガラスの飛散を防ぐものであり、貫通を防ぐ効果は限定的です。
    そのため、単体での防犯性は低いと言えます。
  • 意匠性の制約:内部の網が視界を遮るため、クリアな視界を求める場所には不向きです。
    また、網の存在がデザイン上好ましくないと感じる場合もあります。
  • メンテナンス:網部分に錆が発生したり、長年の使用で網が露出したりする可能性もあります。

網入りガラスの設置が義務付けられる場所

建築基準法では、火災時の安全確保のため、特定の場所に防火性能を持つガラスの設置を義務付けています。

網入りガラスは、この「防火設備」の一つとして広く利用されています。

建築基準法上の「防火設備」

建築基準法では、都市計画区域内で火災が発生した場合に延焼を防止するため、「防火地域」および「準防火地域」を定めています。

これらの地域内の建物や、建物内部の特定の区画(防火区画)に設置される窓やドアなどは、火災時に一定時間炎や煙の侵入を防ぐ性能を持つ「防火設備」とすることが義務付けられています。

網入りガラスは、国土交通大臣が定める基準に適合した防火設備として、これらの場所に設置が認められています。

具体的な設置場所の例

  • 防火地域・準防火地域内の建築物:特に隣地境界線や道路中心線からの距離が近い窓や開口部。
  • 建物内の防火区画:共用廊下と部屋の境、階段室と居室の境など、火災の拡大を防ぐために区画された部分の窓やドア。
  • 延焼のおそれのある開口部:隣接する建物からの火災延焼を防ぐ目的で、開口部(窓、出入口など)に防火設備が必要です。

網入りガラスの「熱割れ」を理解する

前述の通り、網入りガラスの最大の懸念点の一つが「熱割れ」です。

ここでは、そのメカニズムと対策について詳しく解説します。

熱割れのメカニズム

熱割れは、ガラス内部の温度差によって発生する応力(ひずみ)が原因で起こります。

網入りガラスは、特にこの熱割れのリスクが高いとされています。

  1. 部分的な温度上昇:ガラス面の一部が直射日光や室内の熱源(暖房、ストーブなど)によって急激に加熱される。
  2. 熱膨張の差:加熱された部分は膨張しようとするが、周辺のガラスは温度上昇が緩やかで膨張しないため、引っ張り合う力が生じる。
  3. 網の抵抗と負荷:内部の金属網も熱によって膨張しますが、ガラスと金属の熱膨張率の違いや、網がガラスの膨張を部分的に拘束することで、ガラス内部に応力が集中しやすくなります。
  4. ガラスの破損:この応力がガラスの強度を超えると、ひび割れが発生します。
    熱割れのひびは、一般的にガラスの端部から発生し、一本の直線状に伸びることが多いのが特徴です。

熱割れのリスクを高める要因

  • 直射日光が当たる時間帯が長い窓
  • 部分的に日陰になる窓(庇や隣の建物、樹木など)
  • フィルムやシール、カーテンなどをガラスに直接貼る:ガラスの放熱を妨げ、温度上昇を加速させる。
  • エアコンの室外機からの温風が直接当たる
  • ストーブや暖房器具の熱が直接当たる
  • 窓ガラスに付着した汚れや結露による水滴の跡:これらがレンズ効果を生み、特定箇所に熱を集中させる。

熱割れを防ぐための対策

  • 適切な日よけの設置:外部ブラインドやルーバーなどで直射日光を遮蔽する。
  • ガラスへの貼付を避ける:フィルムやシールなどは極力貼らない。どうしても貼る場合は、熱割れ対策が施された専用品を選ぶ。
  • 熱源からの距離を確保:暖房器具や室外機からの熱風が直接当たらないように配置を考慮する。
  • 定期的な清掃:ガラス表面の汚れを除去し、均一な温度分布を保つ。
  • 設計段階での検討:新築やリフォームの際には、窓の配置や庇の有無などを考慮し、熱割れリスクを低減する設計を行う。

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網入りガラスの防犯性について

「網が入っているから防犯性が高い」と誤解されがちですが、これは間違いです。

網入りガラスは、あくまで火災時の飛散防止を目的としたものであり、防犯性能は通常のガラスと大差ありません。

網入りガラスの防犯性の限界

  • 容易な破壊:バールやハンマーなどの工具を使えば、網入りガラスも比較的簡単に割ることができます。
  • 貫通性能:ガラスが割れても網が残るため、破片の飛散は防げますが、網自体は簡単に切断できるため、人が侵入できるだけの穴を開けることは可能です。
  • ガラス破りの手口:空き巣などの侵入犯は、音を立てずにガラスを破壊する手口(こじ破り、打ち破りなど)を用いるため、網の有無はあまり関係ありません。

防犯性を高めるには

網入りガラス単体での防犯性は期待できないため、防犯性を高めるには以下の対策を併用する必要があります。

  • 防犯合わせガラスへの交換:2枚のガラスの間に特殊な中間膜を挟み込んだガラスで、非常に割れにくく、また割れても穴が開きにくいため、高い防犯性能を発揮します。
  • 防犯フィルムの貼付:ガラスの強度を高め、割れにくくする効果があります。また、割れても飛散しにくくなります。
  • 補助錠の設置:窓の施錠箇所を増やすことで、侵入に時間がかかるようにします。
  • 防犯アラームの設置:ガラスが破壊された際に音で威嚇し、周囲に異常を知らせます。
  • 面格子の設置:物理的な侵入を防ぐ効果があります。

まとめ:網入りガラスを正しく理解し、安全な建物を

網入りガラスは、火災時の延焼防止という極めて重要な役割を担うガラスです。

その特性を正しく理解し、適切に設置・管理することで、私たちの命と財産を守る上で大きな効果を発揮します。

しかし、「防火性能があるから全てが完璧」というわけではありません。
特に熱割れリスクや防犯性の限界については、十分に認識しておく必要があります。

これらのデメリットを補うためには、他の建材や防犯設備との組み合わせ、そして適切なメンテナンスが不可欠です。

この情報が、網入りガラスに関する皆様の疑問を解消し、より安全で快適な建物づくりに役立つことを願っています。

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