防煙垂れ壁と建築基準法 | 安全な空間作りのための要点

火災発生時の煙の拡散を抑制し、避難時間を確保するために重要な役割を果たす防煙垂れ壁。
本記事では、建築基準法に基づく設置基準や、設置時の注意点、安全な空間作りのための要点について解説します。

防煙垂れ壁(防煙垂壁)とは?

防煙垂れ壁とは、火災発生時に煙の拡散を抑制し、避難時間を確保するために設けられる壁状の設備です。

建築基準法では、「防煙区画を構成する壁」と定義されており、延床面積500㎡を超える特定の建築物に設置が義務付けられています。

防煙垂れ壁の主な役割は以下の3つです。

  • 煙の拡散抑制

火災発生時に煙の拡散を抑制することで、避難経路を明確化し、安全な避難時間を確保することができます。

  • 火災区画形成

防煙垂れ壁は、火災区画を形成することで、火災の延焼を抑制することができます。

  • 空調効率向上

防煙垂れ壁は、空調空間を分断することで、空調効率を向上させることができます。

建築基準法における防煙垂れ壁

防煙垂れ壁に関する規定が「建築基準法令126条の3」で定められています。

建築基準法令126条の3は、500㎡を超える特定の建築物における防煙垂れ壁の設置基準を定めた条項です。
火災発生時の煙の拡散を抑制し、安全な避難時間を確保するために重要な役割を果たします。



建築基準法令126条の3では、防煙垂れ壁に関する以下の設置基準が定められています。

防煙区画の床面積
500㎡以下

防煙垂壁
不燃材料で造り、又は覆い
天井面から50cm以上下方に突出し
排煙設備の排煙口、風道その他優に接する部分は不燃材料で造ること
1.0m²当たりの質量が4.5kg/m²以下のものは、その下端が排煙口の下端より50cm以上の高さにあるもの

開口部
防火設備を備えた扉、窓等

設置義務の対象となる建築物
延床面積500㎡を超える特殊建築物
延床面積500㎡を超える3階建て以上の建築物

設置義務の例外
高さ31m以下の建物で、100㎡以内ごとに防煙壁や防煙垂壁などで区画された部分
特定の用途の建築物(例:住宅、店舗、事務所など)

防煙垂れ壁 設置義務の確認方法

自身の建築物が防煙垂れ壁の設置義務の対象となるかどうかは、以下の方法で確認できます。

  • 建築基準法令126条の3を確認する
  • 自治体の建築指導課に問い合わせる
  • 建築士に相談する

防煙垂れ壁の設置メリット

煙の拡散抑制による安全な避難時間の確保
火災発生時に煙の拡散を抑制することで、避難経路を明確化し、安全な避難時間を確保することができます。
これは、人命を守るために最も重要なメリットと言えます。

火災区画形成による延焼抑制
防煙垂れ壁は、火災区画を形成することで、火災の延焼を抑制することができます。
これにより、被害を最小限に抑えることができます。

防煙垂れ壁を設置しない場合のリスク
上記のメリットとは逆に、防煙垂れ壁を設置していない場合、火災発生時に以下のリスクが生じます。

  • 煙の拡散が速くなり、避難時間が短くなる
  • 避難経路が不明確になり、避難が困難になる
  • 火災区画が形成されず、延焼が拡大する

防煙垂れ壁の設置時の注意点

防煙垂れ壁の設置時の注意点を下記にまとめてみます。

  • 建築基準法に基づく設置基準を満たす必要がある。
  • 開口部には、適切な防火設備を備える必要がある。
  • 設置場所や高さなどは、火災時の避難動線を考慮する必要がある。
  • デザイン・素材は、周囲の環境や景観に配慮する必要がある。

防煙垂れ壁の動向

近年では、従来の防煙垂れ壁に加え、以下のような防煙垂れ壁が開発されています。

自動下降式防煙垂れ壁
火災感知器と連動して自動的に下降し、煙の拡散を抑制する。

出典:東洋シヤッター株式会社 可動式防煙たれ壁  ケムパネル

不燃シート製の防煙垂れ壁
東日本大震災や熊本地震にて、ガラス製防煙垂れ壁が破損、落下する事故が多く発生したこともあり、軽量で割れることのないシート製防煙垂れ壁も注目されています。
当社にて販売・施工している「フェンスクリアー」などの製品があります。

まとめ

防煙垂れ壁は、火災時の安全確保に不可欠な設備です。
建築基準法に基づく設置基準を理解し、設置時の注意点などを考慮した上で、安全な空間づくりに役立てましょう。

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