東京・銀座、中央通りと晴海通りが交差する角地に、ガラスの壁面が際立つ建築があります。
2001年に竣工した「銀座メゾンエルメス」です。
世界的建築家レンゾ・ピアノが設計を手掛け、四半世紀近く経った今も銀座を象徴する建築の一つです。
ブランドの象徴「カレ」を想起させる外壁
この建物を象徴するのが、壁面を埋め尽くす約45cm四方の特注ガラスブロックです。
この寸法は、4枚並べると約90cm四方となり、エルメスの象徴であるスカーフ「カレ」を想起させるサイズとも言われています。ブランドのアイデンティティを建築にまで落とし込んでいる点が、この建築の奥深さです。
使用されているガラスブロックは、イタリアで特別に製造された特注品です。
完全な透明ではなく、内部の気配を適度に透過させる質感となっており、昼は柔らかな自然光を室内に届け、夜は建物全体を行灯(あんどん)のように発光させます。
ガラスという素材の特性を最大限に引き出した、都市における光の演出と言えます。



「ガラスの家」の思想を現代へ
レンゾ・ピアノは、この設計の着想源として、ピエール・シャローが1932年に手掛けた近代建築の名作「ガラスの家(Maison de Verre)」を挙げています。
かつての建築家が追求した「ガラスによる壁面構成」というテーマを、21世紀の商業建築として再解釈し、より大規模かつ洗練された形で実現しています。

五重塔の構造思想を応用した耐震システム
外観の美しさと同時に注目すべきは、それを支える構造技術です。
構造設計を担当したArup(アラップ)は、地震大国である日本でこの繊細なガラス建築を成立させるため、日本の木造塔(五重塔)に見られる構造原理を参考にしています。
細い柱で開放的な内部空間を確保しながら、地震時の揺れをしなやかに吸収する。ガラスブロック自体に応力が集中して破損しないよう、建物全体で衝撃を逃がす高度なシステムが採用されています。
意匠(デザイン)と構造(エンジニアリング)が高い次元で融合している点も、この建築の大きな特徴です。

ガラス建築の可能性を示す代表例
銀座には多くのガラス建築が存在しますが、メゾンエルメスは反射・透過・拡散というガラスの基本性質を非常に丁寧に使い分けています。
都市の中でガラスという素材が、どのように建築の表情を作り出し、街並みに溶け込むのか。その優れた実例として、今なお色褪せない価値を持っています。

Project Specifications
(主宰:レンゾ・ピアノ)
建築面積:308.89㎡
延床面積:6,111.45㎡
約13,000個使用
※当社の施工物件ではありません
※本記事は建築紹介を目的としています
































