ガラス面に、透明度を維持したまま「書き消し」ができる機能を加える手法として、ホワイトボードシートの施工という選択肢があります。
オフィスや施設の間仕切りにおいて、ガラスは空間を区切ると同時に開放感を演出する重要な要素ですが、そこに実用的な機能を付与することで、より多目的な活用が可能になります。
目次
ホワイトボードシートの基本構造
ホワイトボードシートは、PETフィルムなどの基材表面に、特殊なハードコート層を形成した粘着剤付きの機能性フィルムです。これを平滑な面に貼り付けることで、専用マーカーによる書き消しが可能な「ホワイトボード機能」を付与できます。
従来の据え置き型ホワイトボードと比較し、以下のような実務上の利点があります。
- 省スペース性: 壁面やガラスをそのまま利用するため、脚付きボードのような設置スペースを必要としません。
- サイズ設計の自由度: 必要な寸法に合わせてカットして使用するため、大面積のガラス面や、特定のサッシ枠内に合わせた施工が可能です。
- 意匠性との両立: 下地の性質やシートの仕様を組み合わせることで、用途に応じた機能拡張が行えます。
ガラス下地への施工における特性
ガラスという素材は、ホワイトボードシートを施工する上で非常に適した性質を持っています。
検討の際は、以下の視点がポイントとなります。
高い平滑性による書き消し性能
ホワイトボードの消去性は、表面の平滑性に大きく左右されます。
ガラスは素材自体が極めて平滑であるため、シートを貼付した際の下地の凹凸がほぼ無く、マーカーのインクが残りにくい(ゴーストが発生しにくい)理想的な筆記面を形成できます。
ガラスの透明感と機能の両立
ガラスの特徴である「透明感」をどう活かすかによって、シートのタイプを選択します。
- 透明タイプ: ガラスの向こう側が見える状態を維持したまま、書き消し機能を付加できます。空間の開放感を損なわずに、筆記スペースを作りたい場合に適しています。
- 不透明(白)タイプ: ガラス面を白く仕上げる選択肢です。背景が白くなることで、書いた文字の視認性が高まります。なお、筆記ができるのはシートを施工した面側となります。
Pickup製品:中川ケミカル「ホワイトボードシート」
製品の一例として、中川ケミカル社の「KBWH00C(ホワイトボードシート透明)」の特徴を記載します。
透明PETフィルムによる透過率
KBWH00Cは、無色透明のPETフィルム(50μm)を基材としています。
可視光線透過率は約90.8%となっており、ガラス本来の透過性を損なうことなく施工できるのが特徴です。
光や視界を遮らないため、空間の雰囲気を維持したまま筆記面を作ることができます。
アウトガス対応粘着剤の採用
この製品には、「アクリル系特殊粘着剤(樹脂板対応)」が使用されています。
これにより、通常のガラスへの施工はもちろん、アクリル(PMMA)やポリカーボネート(PC)といった樹脂板に対しても、アウトガスによる気泡を抑制した安定的な貼付が可能となっています。
他素材との組み合わせによる拡張性(合貼り)
透明タイプであるため、下地の色やデザインを透過させることができます。
自由な配色
同社の装飾用シート「カッティングシート®」などと組み合わせることで、インテリアに合わせたお好みの色のホワイトボードを作り出せます。

デザイン・機能の追加
インクジェットプリントのラミネートとしても使用できるため、スケジュール表やグラフィックなど、デザインを施したホワイトボードの制作も可能です。

仕様・機能による製品の分類
設置環境や目的に応じて、適切なシートを選択する必要があります。
ガラス・樹脂板対応
ガラスなどの透明下地をホワイトボードにすることができます。
なお、ガラスではなくアクリルやポリカーボネートの透明板が下地の場合、素材から発生するガスによって気泡が生じる「アウトガス」現象が課題となります。
そのため、樹脂板に貼る場合は専用の粘着剤を備えた製品を選定する必要があります。透明な間仕切り板を活用する際には欠かせないスペックです。
製品例:中川ケミカル ホワイトボードシート 透明 「KBWH00C」(https://nakagawa.co.jp/item/detail/whiteboard/kbwh00c/)
映写への対応
不透明(白)タイプのシートを施工した場合、その白い面をプロジェクターのスクリーンとして代用することも可能です。
会議室のガラスパーテーションを「書き消しができる壁」兼「簡易スクリーン」として運用したい場合に検討されます。
製品例:中川ケミカル ホワイトボードシート 「KBWH01」(https://nakagawa.co.jp/item/detail/whiteboard/kbwh01/)
磁石保持機能
壁面などで「磁石を使いたい」というニーズがある場合に検討されるタイプです。シート内部に鉄粉層を含ませることで磁石の使用が可能になります。※壁面やパネルへの施工向き。
製品例:中川ケミカル ホワイトボードシートMG 「KBWH02MG」
(https://nakagawa.co.jp/item/detail/whiteboard/kbwh02mg/)
導入前に確認しておきたいポイント
ガラス面へホワイトボードシートを施工し、スムーズな運用につなげるためには、事前の環境確認が重要です。
まず、施工対象となる下地の状態を確認してください。
通常のガラスのように表面が平滑であれば問題ありませんが、型板ガラスのような凹凸のある面にはシートが密着しないため施工できないケースもあります。(サンプルで要確認)
また、下地が樹脂板である場合は、前述した通り「アウトガス対応」の粘着剤を採用した製品を選ぶことで、後々の気泡トラブルを防ぐことができます。
次に、設置環境の確認も欠かせません。一般的にこれらのシートは屋内専用として設計されています。
そのため、屋外や常に強い直射日光が当たる場所への施工は、シート自体の耐候性を考慮し、専門家と相談の上で判断することをおすすめします。
メンテナンスと長期使用のための清掃習慣
ホワイトボードシートの表面には高度なハードコート層が施されていますが、この層を傷めずに長く使い続けるためには、日々のメンテナンスに少しの注意が必要です。
筆記の際は必ずホワイトボード専用のマーカーを使用し、消去にはフェルト製などの清潔なイレーザーを用いてください。汚れたままのイレーザーを使い続けると、インクの固形分が表面を細かく摩耗させ、消去性能を徐々に低下させる原因となるためです。
また、長期間使用しているとマーカーに含まれるインクの油脂分が薄く蓄積し、表面が汚れやすくなったり「消えにくさ」を感じたりすることがあります。そのような場合は、定期的に水拭きを行うか、中性洗剤を薄めた液で優しく表面を拭き上げることで、蓄積した油脂をリセットできます。
清掃後は乾いた布で水分を拭き取っておくことで、次の筆記時にも滑らかな書き心地を保つことができるでしょう。
まとめ
ホワイトボードシートは、ガラスという既存のインフラに「書き消し」という実用的な機能を付加できる合理的な建材です。特に透明タイプの製品を選択することで、空間デザインを維持しながら、機能性を向上させることが可能になります。
施工にあたっては、下地条件や求められる意匠性を整理し、目的に合った仕様のシートを選択することが、長期的な利便性につながります。































