サウナにガラスを採用すると、空間の閉塞感が一気に和らぎ、設計上の自由度も大きく広がります。
しかしその一方で、サウナは “ガラスにとって最も過酷な環境” のひとつです。
高温による熱膨張、急激な温度差、金物の腐食…一般的なガラスをそのまま使えば、思わぬ破損や事故の原因になりかねません。
この記事では、サウナで実際に採用されているガラスの種類や厚み、注意点を分かりやすく解説します。
目次
サウナで使用されるガラスの種類
強化ガラス(Tempered Glass)
サウナ扉や開口部に最も一般的に用いられるのが強化ガラスです。
強化ガラスは、600℃ 以上で加熱後に急冷処理を行うことで表面に強い圧縮応力を持たせたガラスで、通常ガラスの約 3〜5 倍の強度を発揮します。
破損時には細かい粒状に砕けるため、サウナのように裸足で歩く環境でもケガのリスクを低減できます。
また、高温環境で重要となる熱衝撃に対しても、強化ガラスは通常ガラスより高い耐性があります。
サウナ室温(80〜110℃ 前後)であれば一般的に問題なく使用可能です。
ただし、強化ガラスは“耐熱ガラス”ではありません。
ストーブに極端に近い位置や、局所的に 200℃ を超えるような環境では使用が推奨されません。
耐熱ガラス
ストーブ周辺のように高温が直接かかる環境では、耐熱ガラスが必要です。
耐熱ガラスは素材段階で高温環境に耐えるよう設計されており、ガラスの種類によって耐えられる温度が異なります。
代表的な耐熱ガラスには以下があります。
- テンパックスフロート(ホウケイ酸ガラス)
長期 450℃、短期 500℃ 程度まで対応。ドイツのガラスメーカーが製造する高耐熱素材。 - ファイアライト(結晶化ガラス)
約 800℃ の耐熱性能を持ち、防火設備にも用いられる高性能ガラス。
ストーブの窓や、ストーブの輻射熱が避けられない箇所では、このような耐熱ガラスが必須です。
強化ガラスを高温部に使用すると、熱衝撃により破損する危険性があるため注意が必要です。

ガラスの厚みと選定の考え方
サウナに使用されるガラス厚は、用途によって適切な値が異なります。
扉や間仕切りでは 8mm〜10mm が一般的です。
ガラスの面積が大きい場合は、重量やたわみを考慮し 10mm を採用するケースが多くあります。
一方、耐熱ガラスのストーブ窓などは 3〜5mm 程度の厚みが一般的です。
耐熱ガラスは素材そのものの性能で高温に耐えるため、厚みを増やすことで安全性が向上するわけではありません。
逆に厚すぎると、加熱時や冷却時にガラス表面と中心部で温度差が大きくなり、熱応力によって破損するリスクが高まることがあります。
ガラスは素材自体の熱伝導率が高く、また熱放射による熱損失もあるため、厚みを増やしても断熱性の向上効果は限定的です。厚みは主に強度・安全性の観点で決定されます。

サウナにガラスを使う際の注意点
断熱性は低い素材である
ガラスは木材や断熱材に比べ熱を通しやすく、サウナ内の温度保持には不利な素材です。
ガラス面積が多いサウナでは、熱の逃げやすさを考慮し、ストーブの出力設定や配置を工夫する場合があります。
熱割れのリスク
ガラスに急激な温度差が生じると、素材の膨張差により“熱割れ”が発生することがあります。
特に、ガラスの端部だけが強く熱せられる場合や、ストーブの熱が一点に集中するような設置条件ではリスクが高まります。
強化ガラスは一般的なガラスよりも熱割れしにくい素材ですが、耐熱ガラスほどの性能は持っていません。
配置次第では強化ガラスでも破損する場合があるため、位置関係の確認は必須です。
金物の耐腐食性
サウナは高温で湿度が高いため、取り付け金物には耐腐食性のあるステンレス(SUS304 以上)などを使用するのが望ましいです。また、大きなガラスの場合、ヒンジや枠材には十分な耐荷重性能が求められます。

強化ガラスと耐熱ガラスの使い分け(まとめ)
- サウナ扉・間仕切り → 強化ガラス
熱衝撃に強く、安全性が高い。一般的なサウナ用途に最適。 - ストーブ周辺 → 耐熱ガラス
数百℃の高温に耐えるため、ストーブ窓や高温が集中する箇所では必須。
サウナ室そのものには消防法上のガラス規定はありませんが、 設置場所によっては建築基準法の防火区画や防火設備の要件が関係する場合があります。

