割れたコップ、使わなくなった鏡、ひびが入った窓ガラスなど…
ガラスって意外と家の中で捨て方に困る素材ですよね。
この記事では、建築現場でも日々ガラスを扱う私たちの視点から、家庭での正しいガラスの捨て方をわかりやすく解説します。また、「なぜリサイクルが進まないのか」という現状の課題と、「業界が挑む最新の挑戦」まで深掘りします。
目次
ガラスの捨て方に関する疑問を解消
まず、多くの方が抱えるガラス処分に関する疑問を解説します。
なぜガラスの捨て方は地域によって違うの?
これは、各自治体のゴミ処理施設の仕組みや、処理の目的が異なるためです。
- ごみを細かく砕いて埋め立てる施設がある自治体:特定のガラスを「燃えないゴミ」としてまとめて収集。
- ガラス瓶を再利用するルートを持つ施設:瓶類を「資源ごみ」として厳格に分別。
- 処理に費用が必要な自治体:大きな窓や鏡を「粗大ごみ」として扱う。
つまり、「全国共通ルール」は存在せず、地域の設備とコストの事情で分けられています。
そのため、必ずお住まいの自治体ホームページで「ガラス」の項目を確認するのが基本となります。
ガラスは「燃えるゴミ」で出してはいけない理由
「焼却炉で燃やせば、溶けてなくなるのでは?」という疑問を持つ方もいますが、結論から言うとガラスは燃えません。
- 融点の違い: ガラスの主成分(二酸化ケイ素)の溶ける温度は約1,500℃。一方、一般的な焼却炉の温度は800〜1000℃程度です。
- 炉の損傷: 溶けずに残ったガラスは、焼却炉内で固まり(スラグ化)、炉の設備を傷める原因になります。
- 人身事故: また、破片が残ると清掃員のケガにもつながるため、ガラスは絶対に「燃えるゴミ」として出してはいけません。
ガラスの「収集区分」

割れたガラスを安全に処分する「3ステップ梱包術」
ごみ収集作業員の方の安全を確保するため、割れたガラスを捨てる際は、以下の手順を必ず守りましょう。
🚨 収集員を守る!安全梱包の3ステップ
- ステップ1:手袋着用で、破片を厚紙や新聞紙などで包み、ガムテープで固定します。
- ステップ2:さらに段ボールや紙袋で包み、二重梱包を行います。(ガムテープで完全に封をする)
- ステップ3:最後に、油性マジックで「ガラス」「キケン」「ワレモノ」と、大きく太く記載します。
ガラスは透明で見えづらいため、“危険物”である意識を持つことが、何よりも重要です。
家庭のガラスの種類別・正しい捨て方チェックリスト
家庭でよく出るガラス製品について、処分方法をチェックリスト形式でまとめました。
※一例になります。詳しくは自治体の情報をご確認ください。
深掘り:板ガラスの「リサイクルできない現実」と業界の挑戦
なぜ窓ガラスや鏡は「リサイクルされにくい」のか?
窓ガラスや鏡などの板ガラスは、技術的には再溶融可能でも、実際にはほとんどが埋め立て処分されています。
その主な理由は、以下の「不純物」と「コスト」にあります。
- 金属膜・樹脂膜の混入: 窓ガラスには、UVカットや防犯のためのフィルムや特殊な金属コーティングが施されています。これらが混ざると、再溶融したガラスの品質が極端に落ちるため、リサイクル工場が受け入れません。
- コストの課題: 不純物を完全に分離・除去するコストが、新しいガラスを製造するコストを上回ってしまうため、経済的に見合わないのが現状です。
業界が挑む!廃板ガラスを「資源循環」させる最新の挑戦
しかし、ガラスは理論上何度でも再利用できるエコな素材です。
この課題を解決するため、業界では大きな動きが始まっています。
2023年、大成建設とAGCなどのリーディングカンパニーが、解体工事で発生する廃板ガラスを再び建築用板ガラスに戻す大規模な再資源化実証試験を開始しました。
これは、今までリサイクルが困難とされてきた板ガラスを「施工時の分別方法の確立」や「運搬ルートの最適化」といった工夫によって、「建設現場から建設現場へ」再生利用する資源循環ループを構築するための挑戦です。
この動きが確立すれば、将来的に窓ガラスが資源ごみとして回収される未来が来るかもしれません。
当面は「不燃ごみ」として処分しなければなりませんが、業界は着実にガラスの「永久資源化」を目指して動いているのです。

まとめ:安全でエコなガラス処分を行うための最終確認
ガラスは一歩間違えると危険な廃棄物にもなります。
燃やせない・リサイクルできない種類が多いからこそ、正しい分別と安全な処理が大切です。
【確認チェックリスト】
- 燃えるゴミには、絶対に混ぜない。
- 割れたものは、二重梱包し「キケン」と明記。
- 瓶類のみ、洗浄して資源ごみへ。
- 大きな窓ガラスは、粗大ごみまたは専門業者に回収を依頼するのが安心です。
ご家庭の安全と、未来の資源循環社会への貢献のために、適切な処分を行っていきましょう。
