「ガラスは割れてはいけないもの」――そう思われがちですが、あえて割れたような表情をデザインに取り入れたガラスがあります。それが「クラックガラス」です。
名前のとおり、ひび割れを意匠として閉じ込めたガラスで、独特の模様と光の反射が生み出す表情が特徴です。割れたデザインがもたらす美しさや空間への演出効果を楽しめるガラスといえます。
記事内画像出典:ipswich.glass
目次
クラックガラスの基本構造
クラックガラスの基本構造は、透明ガラス+強化ガラス+透明ガラス の三層で作られています。
中央の強化ガラスだけを意図的にひび割れさせ、その両側を透明ガラスで挟み込むことで、一体化した合わせガラスに仕上げています。
この構造により、見た目には大胆に割れているように見えても、破片が飛散することはなく、安全に触れることができます。「割れているのに安全」という、一見矛盾した特性がクラックガラスの魅力のひとつです。
デザイン性と美しさ
クラックガラスの最大の魅力は、その独特な模様と光との相互作用にあります。
ひび割れは人工的に作られるものですが、割れ方はランダムで、一枚ごとに異なる表情を見せます。
空間に取り入れれば、常に変化する唯一無二のデザイン要素となります。
光との相互作用
光を通すことで、クラックガラスの美しさは最大限に引き出されます。
自然光が差し込むと、ひび割れ部分が細かく反射してきらめき、日中の空間に柔らかな陰影を生み出します。照明をあてれば、ひび割れのラインが際立ち、幻想的で印象的な空間を演出することも可能です。
光源や光の角度によって表情が変わるため、時間帯によって異なる雰囲気を楽しめるのも特徴です。
ひび割れの個性とバリエーション
ひび割れ模様は、自然が生み出した芸術作品のように見える場合もあります。
ランダムでありながら計算された美しさがあり、空間のアクセントとして視線を引きつけます。ひび割れの細かさや大胆さにより、繊細で上品な印象からダイナミックで印象的な演出まで幅広く表現可能です。
空間演出への活用
クラックガラスは装飾性だけでなく、空間演出の手段としても優れています。
店舗やホテルの間仕切りに用いれば、視線をやわらかく遮りつつデザイン性を高めることができます。
住宅でも、リビングや玄関の建具に取り入れることで、採光を確保しながら遊び心や高級感を加えることができます。さらに、カウンターやテーブルの天板に使用すれば、光の反射によって角度や時間帯で表情が変わるダイナミックな演出が可能です。

主な活用イメージ
クラックガラスは、装飾性を重視した空間で特に効果を発揮します。
視線をやわらかく遮る間仕切りや、光を取り込みつつアクセントとなる建具、天板やカウンターなど、用途に応じて多彩なデザイン演出が可能です。光と影の変化を取り入れた空間は、見た目の美しさだけでなく、訪れる人に印象的な体験を与えます。
採用時の注意点
装飾性に優れたクラックガラスですが、あくまでデザイン用途として使用することが基本です。
また、ひび割れの密度によって透明度が変化します。
ひび割れが多いほど視線を遮る効果は高まりますが、透過性は低くなるため、設計段階で「どの程度の透け感を確保したいか」を確認することが大切です。
まとめ
クラックガラスは、ひび割れ模様を美学として取り入れたユニークな合わせガラスです。
安全性を確保しつつ、光の反射や透過を通して空間に独自のアクセントを与えます。従来の「透明でシンプルなガラス」という概念を超え、割れたデザインの美しさを楽しみたい空間でこそ、その魅力が発揮される素材といえるでしょう。