何が違う?熱線ガラスの違いを解説|熱線反射・吸収板・Low-E

建築におけるガラスの選定は、室内環境の快適性や省エネルギー性能に直結する重要な要素です。

特に太陽光の熱に関わるガラスは種類が多く、それぞれの特性を理解していないと、設計段階での性能評価や施工後の室内環境に差が出てしまいます。

この記事では、代表的な熱線ガラスである「熱線反射ガラス」「熱線吸収板ガラス」「Low-Eガラス」の特徴、性能の仕組み、用途に応じた選び方を解説します。

熱線反射ガラスとは

熱線反射ガラスは、ガラス表面に特殊な金属膜をコーティングすることで、太陽光の赤外線を効率的に反射し、室内への熱の侵入を抑えるガラスです。

夏の室温上昇を防ぎ、冷房負荷の軽減に大きく貢献します。
外部から室内が見えにくくなるため、目隠しやデザイン上のアクセントとしても活用されます。

反射膜は光の波長によって特定の赤外線を反射するため、可視光線は透過しつつ熱だけを抑える設計が可能です。

そのため、室内は明るさを確保しながら遮熱性を高められるのが大きな特徴です。
ただし、膜の種類や厚みによっては光沢や色味が出る場合もあり、建物外観や室内の光環境に影響を与えることがあります。


参考製品:【AGC】サンルックス® T 高遮蔽性能熱線反射ガラス JIS R 3221 熱線反射ガラス
https://www.asahiglassplaza.net/products/sunlux_t

熱線吸収板ガラスとは

熱線吸収板ガラスは、ガラス自体に金属酸化物を練り込み、赤外線を吸収することでガラスの温度を上げつつ、室内への熱の侵入を抑制するガラスです。

見た目は自然で、色味の調整も可能なため、建物外観に合わせやすいのが特徴です。

ここで注意したいのは、「ガラス自体が温まるので省エネ効果はないのではないか」という疑問です。

実際には、吸収した熱の多くは室内よりも外部に放射されるため、総合的な日射熱取得率(日射侵入率)は通常のガラスよりも低くなります。

つまり、室内に流入する熱量は減少し、省エネ効果があります。

例えば、透明なフロートガラス6mmと比較した場合、透明ガラスの室内への日射熱取得率は高く、熱線吸収板ガラスは値が低くなります。吸収した熱が室外に逃げる割合が多いため、結果として夏の冷房負荷低減に貢献します。


参考製品:【セントラル硝子】グリーンラル
http://www.cg-glass.jp/products/search/02.html

Low-Eガラスとは

Low-E(Low-Emissivity)ガラスは、極めて薄い金属膜をガラス表面にコーティングして赤外線を反射させ、断熱性能を高めたガラスです。

複層ガラスと組み合わせることで、冬の暖房熱を逃さず、夏の外部熱も抑制できます。

膜が非常に薄いため、見た目はほぼ通常の透明ガラスと変わらず、意匠性を損なわずに断熱・遮熱効果を両立できるのが特徴です。

複層化されたLow-Eガラスは日射熱取得率が非常に低く、夏は室内を涼しく保ちながら冬の暖房効率を高めることができます。


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Low-Eガラスは万能か?

「結局、Low-Eガラスにすれば全ての性能を満たせるのでは?」という疑問があります。

結論として、Low-Eは非常に高性能ですが、全てを完璧にカバーできるわけではありません

  • 夏の強烈な日射を抑える能力
    → 特定の条件下では、熱線反射ガラスの方が遮熱性能が高くなる場合があります。

  • 意匠性や色味の調整
    → 熱線吸収板ガラスは自然な透明感や色味を保ちながら遮熱することができ、建物外観や室内デザインの自由度が高いです。

つまり、Low-Eは「夏も冬も一定の快適性を確保する万能型」ですが、特定の用途や強い日射条件、意匠上の制約では他の熱線ガラスが有利になる場合があります。

熱線ガラスを選ぶときの考え方

熱線ガラスを選定する際は、立地条件、日射状況、建物の意匠性、コストなどを総合的に判断する必要があります。

夏の暑さ対策を優先する場合は熱線反射ガラスや熱線吸収板ガラス、年間を通して快適性と省エネ性を両立させたい場合はLow-Eガラスを複層化して使用するのが最適です。

日射熱取得率や可視光線透過率のデータを確認することで、具体的な省エネ効果や室内の明るさを事前に把握できます。


まとめ

ガラスは、一見すると透明な板のように見えますが、反射・吸収・断熱といった多彩な性能を備えた製品もあります。
熱線反射ガラスは日射をはね返し、熱線吸収板ガラスは取り込んだ熱を外へ逃がし、Low-Eガラスは夏冬を通じて快適性を支えます。

「結局どれを選ぶべきか」という答えは、建物の立地や用途、意匠性、省エネ目標によって変わります。

重要なのは、ガラスごとの特性を理解し、性能値(例:日射熱取得率・可視光透過率)を基準に最適な組み合わせを検討することです。

ガラスは建物の表情を形づくるだけでなく、日々の暮らしやエネルギーコストに直結する存在です。

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