連日猛暑が続く中、強い日差しにさらされる機会が多くなりました。
特に気になるのが「紫外線」ではないでしょうか。
私自身も、車の中にいるときに「UVカットのガラスだと聞いているのに、なぜか日焼けする」と感じた経験があります。
では、建物や車のガラスは、本当に紫外線を防いでくれているのでしょうか?
目次
紫外線とは何か|人体や建物に与える影響
紫外線は、太陽光に含まれる光の一種で、目には見えませんが強いエネルギーを持っています。
紫外線は波長の違いによって大きく三つのタイプに分かれており、それぞれ人体や環境に異なる影響を与えます。
- UV-A(315〜380nm):地上に届く紫外線の約95%を占めます。肌の奥に到達し、しわやたるみの原因になるとされています。
- UV-B(280〜315nm):肌表面にダメージを与え、日焼けや炎症を引き起こす主な要因です。
- UV-C(200〜280nm):最も有害な紫外線ですが、オゾン層で吸収されるため、地表にはほとんど届きません。
紫外線は、適度であればビタミンDの生成を助けるなど良い働きもありますが、過剰に浴びると肌の老化やシミの原因となり、建物内部の家具や床材の劣化にもつながります。

一般的な板ガラスは紫外線をどこまで防げる?
住宅やビルに使用される透明なフロートガラス(いわゆる普通の板ガラス)は、可視光線を通す一方で、紫外線については十分に遮断する性能があるとは言えません。
特に一般的な厚みのガラスでは、多くの紫外線がそのまま透過してしまいます。
実際に、紫外線の透過率を厚みによって比較すると以下のような傾向があります。
- 厚さ3mmの透明板ガラス:紫外線透過率 約74%
- 厚さ12mmの厚板ガラス:紫外線透過率 約54%
ガラスが厚くなれば紫外線の通過量はある程度減少しますが、透過を完全に防ぐことはできません。
つまり、日射しが差し込む窓辺では、肌や家具が紫外線にさらされている状態だということになります。
紫外線がガラスで遮断されるイメージ
※ イメージ図です。実際の遮蔽率とは異なります。
合わせガラスの仕組みと紫外線カットの性能
合わせガラスは、二枚のガラスの間に樹脂製の中間膜を挟んで一体化した構造を持っています。
この中間膜に使用されるのはPVB(ポリビニルブチラール)という特殊な樹脂で、紫外線を吸収する性質があります。
この構造によって、合わせガラスは、通常の板ガラスと比べて非常に高い紫外線遮断性能を発揮します。
具体的には、ISO規格に基づく測定で、紫外線透過率がほぼ0%(正確には0.0%:小数第2位を四捨五入)となる製品もあります。
中間膜が紫外線を遮るため、肌への影響や家具の劣化、内装材の色あせなどを効果的に抑えることができます。
また、このガラスは衝撃時にも割れにくく、万が一破損した場合にも飛散を防ぐ特徴があるため、防犯性や安全性の面でも優れており、多機能な建材として住宅や商業施設で広く採用されています。

車内で日焼けするのはなぜ?|ガラスの種類による違い
「車に乗っているときに日焼けする」という経験は、多くの人が一度は感じたことがあるかもしれません。
実はこれ、車に使用されているガラスの種類に原因があります。
まず、フロントガラスには安全性の観点から、法律により合わせガラスの使用が義務づけられています。
このため、フロントガラスに関しては紫外線の大部分が遮断されています。
中間膜によりUVカット率はほぼ100%に近く、皮膚への影響は非常に少ないとされています。
一方で、側面や後部のガラスは強化ガラスが使用されていることが多く、これはフロントガラスとは異なり、紫外線の透過をある程度許してしまいます。
強化ガラスは安全性や耐衝撃性に優れますが、紫外線遮蔽性能は素材そのものの特性に依存するため、加工やコーティングがない限り紫外線の一部が車内に入ってきます。
その結果、ドア側の窓から差し込む光で腕や顔が日焼けすることがあるのです。
さらに、日差しの「じりじり」とした暑さの正体は、紫外線だけでなく赤外線にも原因があります。
赤外線は熱エネルギーを運び、車内の温度上昇や体感の不快さに直結します。
対策としては、紫外線と赤外線を同時に遮る専用のフィルムを窓に貼ることで、後付けでも十分な効果が期待できます。
また、最近の新型車ではサイドやリアのガラスにも紫外線カット性能を持たせたガラスが採用されるケースが増えており、体感温度の低減や日焼け防止に大きく寄与しています。

ガラスと他の透明素材との違い|なぜガラスが選ばれるのか
透明な建材にはガラスのほかにも、アクリルやポリカーボネートといった樹脂素材が存在します。
これらの素材は、紫外線の遮断性能においては非常に高く、短期的には優れた効果を発揮します。
しかし、長期間にわたって屋外や強い日差しにさらされると、紫外線によって素材そのものが劣化しやすくなります。
たとえば黄ばみやひび割れ、透明度の低下などが起こりやすく、外観や性能の維持に課題があります。
また、表面が柔らかく、傷がつきやすい点も、建材としての耐久性を考えると不利な特徴です。
ガラスは、こうした問題に強い無機素材であり、紫外線による劣化がほとんどありません。
透明性、耐久性、長寿命といった特性を兼ね備え、住宅や商業施設といった長期使用が前提の建築には最適な素材と言えるでしょう。

暮らしを守るガラス選び|日焼け・劣化を防ぐために
窓から入ってくる光は、明るさや開放感をもたらす一方で、紫外線による健康被害や、家財・内装の劣化といったリスクも含んでいます。
そのため、どのようなガラスを使用するかは、単なるデザインやコストの問題ではなく、快適な暮らしを左右する大切な判断材料です。
日焼けや劣化を防ぎたいのであれば、紫外線を遮断できる合わせガラスの採用や、窓フィルムによる後付け対策が効果的です。
特に日射が多く差し込む南面の窓や、子ども部屋・寝室など長時間過ごす部屋の窓には、こうした工夫が有効です。
紫外線は目に見えない存在ですが、確実に日常に影響を及ぼしています。
ガラスを通して入ってくる光が本当に安全なものかどうか、一度立ち止まって考えてみることが、住まいと健康を守る第一歩となるはずです。