【曲げガラス】特徴や種類、注意点について詳しく解説!

建築の世界では、直線だけでは表現できない“曲線美”が求められる場面があります。

その造形を可能にするのが「曲げガラス」です。
光を受けて滑らかに反射するガラスのカーブは、美しさと高級感を与え、デザインの印象を大きく左右します。

曲げガラスとは

曲げガラスとは、平らなフロート板ガラスを電気炉などで加熱し、ガラスが柔らかくなる温度(軟化点)に達した状態で、金型や型枠の形状に沿わせて曲率を持たせたガラスを指します。

この曲げ加工は主に「熱加工」によって行われます。
製造の仕組みとしては、ガラスを均一に加熱し、その自重を利用するか、または型に沿わせることで、指定されたカーブ(曲率)へと成形します。成形後、ゆっくりと冷却する徐冷の工程を経ることで、ガラス内部の応力を取り除きながら形状を固定し、建築材料として必要な強度と安定性を確保します。

曲げガラスの最大の価値は、その比類なきデザイン性の高さにあります。
一般的な平面構成では表現できない流線型のフォルムが可能となり、建物の外装(ファサード)や内装に、上品で特別な印象を与えます。

また、意匠性を保ちながら機能性を高められる点も特徴です。
曲げ加工後にセラミック印刷を施して模様や色彩を加えたり、二枚のガラスを貼り合わせる合わせガラス加工を行うこともできるため、建物のデザインを損なうことなく、高い安全基準や環境性能を満たす空間演出を実現できます。

出典:tunneltech

曲げガラスの用途

曲げガラスはその美しい曲線と強度を活かして、さまざまな建築箇所に利用されます。

適用部位主な用途と効果
外装の例(建物の外部)
ファサード・壁面建物の正面に流線型のガラスを設置することで、デザイン性を大きく向上させ、優美な印象を与えます。
サイン・看板曲線を持たせることで、直線的なものよりも視覚的に柔らかく、目を引く印象を与えます。
手すり・窓・ドア曲げガラスを手すりやドアに用いることで、モダンで高級感のある洗練された空間を演出します。
内装の例(建物の内部)
パーテーション・間仕切り曲線を生かしたパーテーションは、空間の視覚的広がりや柔らかさを演出し、動線に配慮した設計が可能です。
壁面装飾・手すり・ドアインテリアのアクセントとして利用でき、空間デザインに深みと個性を与えることができます。
ガラスショーケース展示什器として、曲線を用いることで陳列物に視覚的な魅力を加え、展示空間を特別なものにします。
出典:archpaper.com

曲げガラスの種類

曲げガラスは、曲率や形状に応じて複数の種類に分類されます。設計意図に応じて選択が可能です。

種類(形状)特徴と設計への適用例
1/8曲げ(浅曲げ)軽度の曲線を持たせたガラス。大きな曲率は必要ないが、直線では単調に感じる部位に適しています。
1/4曲げより明確な曲率を持たせたガラス。手すりや間仕切りなど、緩やかな曲線を求める場合に使用されます。
山曲げガラスをアーチ状に持ち上げた形状。ファサードやサインなどで立体感を演出します。
片曲げ一方向に曲げたガラス。シンプルな曲線美を演出しやすく、設計上の自由度が高いのが特徴です。
箱曲げ立体的な箱型を形成する曲げ加工。展示什器やサインなどで立体的な表現が可能です。

製造範囲と注意点

曲げガラスの製造可能範囲は、ガラスの厚みや寸法、形状により異なります。

以下は一般的な目安です。

  • ガラス厚:3mm~19mm、合わせガラスの場合は3+3mm~19+19mm
  • 最大サイズ:3,000×5,300mm
  • 最少枚数:1枚から製作可能

※形状や厚みにより製造可否が変動するため、必ず事前にメーカーや施工会社へ確認が必要です。

注意点

注意点・課題設計・施工上の配慮事項
形状・寸法による制限曲率が大きくなる(曲がりがきつくなる)ほど製造の難易度が上がり、製作可能なサイズが制限されます。設計段階でのメーカーとの確認が必須です。
熱処理による反りや歪み(ひずみ)大型や厚手のガラスを製造する際、冷却工程で微小な反りや光学的ひずみが発生することがあります。設計段階で公差(許容誤差)を考慮する必要があります。
重量と取り扱いガラスは厚みが増すほど重量が増大します。施工時の安全な取り扱いと、重量に耐えうる適切な固定方法の選定に配慮が必要です。
安全性の確保高所や手すり、ドアなど、人身の安全に関わる部位に使用する場合は、**強化ガラス**や**合わせガラス**との組み合わせが強く推奨されます。
意匠加工との連携セラミック印刷や複層ガラス加工といった後加工の計画は、曲げ加工の工程と密接に関わるため、設計の早期段階でメーカーと調整する必要があります。

まとめ

曲げガラスは、建築デザインにおいて直線では表現できない美しい曲線を演出する強力な素材です。外装や内装のアクセントとして、商業施設や住宅、高層ビルや公共施設まで幅広く活用できます。

設計や施工にあたっては、曲率・寸法・厚みなどの製造条件を正確に把握することが不可欠です。また、重量や安全性、後加工との連携を考慮することで、品質の高い仕上がりが実現できます。

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